序盤から、かなり引き込まれました。まだ何も始まっていないのに何かがじわりと忍び寄る雰囲気、異物感、素晴らしいです。後半の夢のシーンも納得し、楽しませてもらいました。ただピタさんの作品となると、ショートショートの宝箱に掲載されている「うどんとおんな」が一番好きです。
冒頭で主人公に共感を覚えて、あとはノンストップでした。抱えた煩悩(主人公の場合は物書きとしての『業』でしょうか)ゆえに導かれ、知らず惑わされ、最後は気付きと共に突き放される――。『ドライなのだけれど決して不親切ではなく、実はとても行き届いている』という印象を、人物の振る舞いからも情景描写からも、物語の構成そのものからも受け取れる。そんな良作短編です。