第41話 夜桜

「夜桜を見に行こう」

 「へ?」先輩が唐突にそう言った。

 「さぁ、日本酒を持っていくぞ」

 「先輩先輩、夜桜を肴に日本酒を飲むのは風流ですが、月迷町に桜なんてあるんですか?」どこもかしこも本屋本屋本屋のこの町に桜が咲いているところなんて見たことがない。

 「あるんだよこれが。ま、ついてきなさいな」そう言うと日本酒を持って外に出てしまった。

 「待ってくださいよぉ」

 外は提灯で照らされている。明かりが点々と灯る道に導かれて着いていくと路地裏に行き着いた。

 「この辺りに隠れ桜があるんだ」

 「隠れ桜?」

 「魔法猫たちが作る魔法の桜さ」と視界があけた。淡く光る白い桜が満開に咲いていた。

 「さぁ、宴だ。騒げよ!」桜の周りにはすでに数人の人たちが酒を飲んでいた。それと猫たちが。

 路地裏に咲く隠れ桜は仄かに光り、人々の騒ぎを見守っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る