第36話 再開

その古びた本屋は不思議と懐かしかった。

 ざっと目を通した感じだと、小説を主に扱っているらしいと言うことが分かった。

 本の背表紙を何となく目で追っているとき「お」と目が止まった。

 紫の表紙の本を手に取った。タイトルと作者を確認する。間違いない、あの本だ。

 それは私が二十年前から探していた本だった。

 その本は持っていたがもう一冊欲しいと思っていた本だった。私は迷わずレジに持っていった。そのとき、本棚の曲がり角でバン、とぶつかった。見るとめがねをかけた少年がいた。私は驚き、どういう事かと思い、ある結論にたどり着いた。

 私は結局、その本を買わずにもとの場所に返して店を後にした。その店はあの後もう一度行ってみようと思ったが、違う店になっていてあの本に会うこともなかった。

 あの時見たことが本当なら、私はあの本に、あの本屋で出会ったことになるだろう。

 そうだ。

 あの時私とぶつかった少年は、私自身だったのだから。

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