第29話 風邪薬

風邪を引いたので病院に行った。

 「こりゃ、知恵熱だね」と医者は言った。

 「背伸びして、難しい本でも読んだんじゃないか?」図星だったので言い返せなかった。

 診察を終えて待合場で待つ間、ポケットから本出した。確かに、自分には難しいが熱が出るほどとは思わなかった。私は中盤まで読み進めた本を未練たらしく眺めていた。と、名前を呼ばれた。会計を済まし処方箋をもらった。処方された薬を見て私はガックリとした。

 薬として処方されたのは子供向けの絵本だった。

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