第26話 火の用心

最近この町では火事が多い。木造建築が多いこの町では他人事ではない。町内会と消防は見回りをすることにした。魔法使いたちも火の精霊、水の精霊などと協力して防火に備えている。

 どうも今回の火事は自然に起きたものでなく、放火らしい。平和なこの町では珍しい物騒な話であった。

 そんなある日、家に帰る途中、火の用心と近くで声がした。どうやら今日も見回りがあるらしい。

 声は私の方に近づいてきた。どうやら私の家の方に行くらしい。火の用心という声が夜に響く。と、なにやら焦げ臭いにおいがした。まさかと思って臭いの元の方に行くと火が上がっていた。私は人を呼ぼうとした。その時「そこの人ちょっと危ないよ」という声がした。見ると赤い鳥が飛んでいた。鳥は口を開けると炎を吸い込み始めた。火を全部吸い込むのに十秒もたたなかった。鳥はパタパタと降りてくると「君が第一発見者?」と聞いてきた。私は鳥が喋っているのに驚いてうまくしゃべれなかった。それを察したのか鳥は「私は火の精霊さ」と言った。少しして消防と警官が現れた。私は事情を話すと彼らはこう言った。

 「本当に火の用心の声を聴いたんだね?」

 「ええ、私の家の方に向かっていると思ったので間違いありません」

 「おかしいな、今日は北の方を見ているはずなんだが」そこで私たちはピンときた。

 数日後、放火犯たちは捕まった。

 なんでも彼らの手口は見回りに成りすまして行うというものだったらしい。

 火の用心と言いっていればまさかそれが犯人とは思わないというわけだ。犯行の動機は火の精霊を呼び出すための儀式だったらしい。火と知識を食らう火の精霊を呼び出すのには本を燃やすのが一番だという。まさにこの町はうってつけの場所というわけだ。

 こうして事件は終わった。見回りはまだ続けるそうだが火の用心という言葉は使わないらしい。

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