第17話 中央図書館

「この町の住人は魔法使いでないのなら中央図書館にお世話になるんですよ」と私は魔法使いに言った。

 「どうしてですか?」

 「個人で持てる本には物理的に限界があるから、その限界を超えたとき人は中央図書館に本を寄贈するんです」

 「何かメリットが?」

 「ええ、他者に閲覧されることを条件に無料で魔法書架を貸し出しているんです。なので自分の本棚が埋まった人たちが最後に中央図書館に来るんですよ」

 「なるほど、ではなぜ最初から中央図書館に寄贈しないんですか?」

 「それは・・・」という所で目的地である中央図書館に着いた。

 見た目には普通の図書館だ。木造二階建て。金属プレートに中央図書館とだけ書いてある。

 扉を開けてカウンターに行って「本を寄贈したい」と告げると司書さんが手続きの紙を持って現れた。

 「中央図書館に寄贈するのは初めてですか?」と聞いた。私は「はい」と答えた。

 「では地下500階の“イ”スペースに書棚を確保しましたのでそちらを利用してください」と言われた。

 「ああ、なるほど」と魔法使いは手をうった。

 「さっきの話分かりましたよ」と魔法使いが言う。

 「手続きが面倒だから溜まってから来るんですね?」それも理由の一つだが。

 「まぁ、行けばわかりますよ」地下に続く暗い階段を見ながら言うと魔法使いは察したらしい。

「ああ。そういうことですか」そういうと魔法の杖を構えた。すると先端に明かりが灯る。

「私の国にもありますよ。こういうの」

「一度そこまでの地図が出来てしてしまえば、簡単なのですが。最初に本を棚に入れる時だけはダンジョン化した図書館を通って行かないといけないのですよ。だから魔法使いを雇うのも運搬と警護としてです」魔法使いは私の説明に「腕が鳴ります」と意気込んだ。

そして私たちは暗い階段を降り始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る