第12話 魔女の落とし物
ある日のこと仕事が終わって帰ろうとしていた時、外が騒がしいことに気付いた。外に出てみると人だかりができている。どうしたのだろうか、と思って近づいていくと。人々の話す声が聞こえた。
「夜道辻に落ちたらしいよ」
「魔術課が規制をかけて通れないらしい」
「ってことは一条まで遠回りしないといけないの?」などなど、なにやら物々しい雰囲気だ。私は警察官に何があったのかを聞いた。すると警官はこういった。「魔女の落とし物があったらしいんですよ」と。
「持ち主はまだ現れてないんです。こちらとしても対処が難しくて。結局あたり一帯を封鎖するしかないんです」
「どれくらいで撤去できますか?」
「いま、魔術課の人間が見ています。あと一時間くらいで完了するでしょう」私は夜道辻に用があったので店に戻って待つことにした。
「何があったんだい?」と店長。
「魔女の落とし物があったらしいんです。珍しですね」
「魔女の落とし物でこの騒ぎなのかい?」
「ええ、そうらしです」
「そんな物騒なものを新人が持ってるとは思えないんだがね」まぁ、魔女たちの力は一般人からしたら新人も玄人も関係ないが。
「しばらく待ちます」
「そうかい」とカラン、と店のドアが開く音がした。見るととんがり帽子に黒いローブを纏った魔女がいた。年は13、4。
魔女はコーヒーを注文した。帽子を脱ぐ様子もなかった。
コトン。と店長がコーヒーを置いた。「どうぞ」。魔女はゆっくりと飲み始めた。そして少しすると魔女はテーブルクロスを広げた。と呪文を唱え始めた。店長はちょうど店の奥にいてこちらを見ていなかった。テーブルの上が仄かに青く光った。何らかの魔法を使っている。ほんの数十秒だったろう。魔法が終わったのか、光が消えた。私は気になって、魔女のテーブルに行った。テーブルには魔法陣がかかれたテーブルクロス、その中心には黒い木箱が。その時私に気付いた魔女が「気づかれてしまいました」と言った。私は身構えた。
「大丈夫ですよ。危害を加えるつもりはありません」13,4には見えない落ち着いた声で魔女は言った。
「地脈の関係上ここが最適だったので」
「それってどういう」
「夜道辻の落とし物、あれ私のなんです」そこでぴんときた。
「じゃあ、その黒い箱が?」
「ええ、転移魔法が失敗してしまって」空から落ちてきたわけでないのかと疑問に思った。
「なんでこんなまどろっこしいことを?透明になって空から回収するとか、方法はいくらでもあるのでは」私の問いに魔女は答えず。店長を呼んで会計を済ませた。去り際に魔女は恥ずかしそうに「私、高所恐怖症なんですよ」といった。
カランと音がして魔女は店を出た。そういえば箒を持っていなかったと思った。
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