第11話 流れ星
銭湯からの帰り道。自宅近くの細い道を歩いているとき、空から一線、光が落ちるのを見た。流れ星?と思ってその場所にいって見た。すると仄かに白く光る石の欠片があった。手に触れるのはためらわれた。少しそうしていると空の上から声がした。
「それには触れないでくださいー」間延びする声は注意を呼びかけるには力が抜けたような声だった。空を見ると淡い暖色の光が見えた。と、見る間にそれが近づいてきた。
箒にとんがり帽子。魔女だ。
魔女は箒の先端にかけていたカンテラを取ると足を地面につけた。
「よかった。見つかって」と言うと白く光り石に向かって何か呪文を唱えた。すると石は宙に浮き魔女が用意した黒い箱の中に吸い込まれた。
それをただ茫然と見ていた私に魔女は私に気付いた。
「えーとですねー」どうやら説明しようとしているらしい。
「あれは月の欠片なんですよ」魔女は空を指差した。そこには三日月の月があった。
「たまに落ちてしまうんですよね」
「あなたは何をしてるんですか?」
「月の整備ですー魔女の間では勉強にもなるしお金も貰えるというおいしいバイトなのですー」月が整備を必要としているというのは初耳だ。あれは機械の類なのだろうか?空を見ると半月になっていた。
「何かお礼したいんですが。手持ちのものはないんですよねー」と魔女は困ったような顔で言った。
「いいですよ。別に何かしたわけじゃないし」
「いえいえ、流れ星を追いかけて、見つけてくれたじゃないですか。私それを目印に降りてきたんですよ」指先をくるくるとまわしながら言った。
「ああ、そうだ。あれがありました」と言って魔女は懐から紙片を取り出した。
「これ、猫福堂って知ってますか?そこの商品券です」猫福堂と言えば和菓子のお店だ。私もたまに買ったりする。
「いいんですか?」
「いいんですよー本当だったら一、二時間くらい探さなきゃいけなかったんですからー気にしないでくださいましぃ」そういうと「それでは」と言って魔女は箒に乗って飛んで行ってしまった。あっという間に見えなくなり小さな光になってしまった。
今日も魔女たちは空の上で月を整備しているのだろうか?そう考えると当たり前のように見ているものでも、その裏では誰かが頑張っているのかもしれないと思って少し見方が変わるような気がした。
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