第7話 真実を映す鏡

以前「呪われた本」を買ってひどい目にあった友人が、また怪しげな本を買い込んでいるのを見た。懲りない奴だなと近づくと友人はなにやら男には似合わない手鏡を持っていて、それを本に映していた。奇妙に思っていると向こうの方が気がついた。

 「よう、声くらいかければいいのに」と友人は何でもないように言った。

 「いや、お前がまた呪われてそうな本を手に取っているから忠告してやろうと思ってな」

 「それなら心配いらないさ」と友人は自信ありげに言う。なにやらからくりがありそう。

 「その手鏡がなんかしてくれるのか?」というと。

 「やはり気づかれたか。そうなんだよ。これ」手鏡を私に見せる。何の変哲もないふつうの鏡にしか見えない。

 「真実を映す魔法の鏡なんだ」友人は少し声を潜めてそういった。

 「なるほど、鏡は古来より真実を映すと言うからな。それで呪いの本を見分けているのか?」

 「ああ、呪われた本を映すと禍々しいオーラが映るという」まぁ、魔法使いたちが多く訪れる町だ、そういうものが売り買いされていてもおかしくはない。

 説明を終えると友人は、実は前から気になっていた本があるんだ、といって店の奥を見た。なんでも高位な魔法使いでも手を出さない曰く付きの本らしい。今日は鏡でどんなものが映るのかを見てやろうという話だ。私は友人が無茶をしないようについていくことにした。

 本はショウウィンドウの中にあり手で触ることはできない。値段もべらぼうに高かった。赤茶の革張り、五百ページはありそうな厚さ、何ともいえない威厳をもった本だった。

 友人は早速、本の前に行き鏡を向けた。すると、一瞬ピカっと鏡が光った。

 「なんだなんだ」と友人。私も近づく、その時、友人は「あっ」と声を上げた。

 「どうした」と友人を見ると、鏡を見ている。つられてみると。

 「あ」鏡にはピシッと斜めに亀裂が入っていた。

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