第3話 魔法猫に本を選んでもらった話

その日はおもしろい本が見つからず、がっかりしながら家路についていた。空には三日月がまるであざ笑うかのように浮かんでいた。と、その時路地裏に奇妙なゆがみがあるのに気づいた。もしやと思いその路地には行ってみると、そこには一匹の虎猫がいて本を読んでいた。

 「わわ」と虎猫が言う。それにすかさず私は「みつけた」と言った。すると虎猫は観念したようにうなだれ「願いを言え」という。やはり魔法猫だった。

 「私の力の範疇で叶えよう」そうは言われても私には願いらしき願いはなかった。私が少し黙っていると「どうした」と虎猫が言う。そこで私はあることを思いついた。

 「本を選んでほしい」魔法猫は読書家と聞く、いい本を選んでくれそうだ。

 「わかった」と虎猫が言うと次の瞬間、視界が暗転した。気がつくと本屋の前にいた。虎猫は背中でついてこいといいながら店に入っていった。店内は本を選ぶ猫たちが数匹。どうやら猫御用達のお店だったらしい。

 私は虎猫についていってあれこれと本を物色するのを見ていた。最終的に彼は十冊の本を選んだ。会計を済ませると虎猫はこう言った。

 「おすすめの本と私が読みたい本を入れたから、私が本を読み終えるまでしばらく世話になるぞ」

 彼はまだ私の部屋で本を読んでいる。

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