ぶくぶく

@oyogenaino

ぶくぶく



0820 16:23





「じゃあ私、そろそろ帰るね」


いっちゃんは、ばしゃっと海に飛び降りた。

ゆらゆらと長い髪も海底に引き込まれ、それからぶくぶくと空気の泡が浮かんで、やがてはそれも消えてしまった。

いっちゃんは海の神様のお嫁さんなのだ。

昔昔一緒に海に遊びに来たとき、今よりも小さかったいっちゃんは波にさらわれてしまった。そのときに神様に助けてもらったんだといっちゃんは言う。私はまだ、神様には会ったこともないし、海の底に行ったこともないんだけど、いっちゃんは海の底はとっても楽しいとよく言っている。

でも日本の海の神様なんて、物凄いおじいちゃんなんじゃないだろうか。それはなんだか嫌だなぁ。私なら若い人がいいなぁ。

いろいろあってお嫁にいったいっちゃんは、今では普段は海の底に暮らしている。いっちゃんのお母さんは多分、いっちゃんは海にさらわれて死んでしまったと思っているし、私のことだって親友を失ったショックで頭のネジが外れてしまったんだと思っている。

でもそんなことはない。

私は至って今まで通りだ。

でも時々思うのだ。

どうして私じゃなかったんだろう。

私は神様に手紙を書くことに決めた。

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