神 参
「いえ、あの……」
「でも、私を愛せたら、なんの問題もないのにな、と思っているのも伝わっているぞ。
義務でそう思うのもどうかと思うが。
だが、あの眞鍋のことも、お前はそう好きでもないようだ」
成子、と神は呼びかけてくる。
「今宵は共に過ごして欲しい」
「いいですよ」
「あれに入ってもいいか」
と性懲りもなく、道雅を指差してくる。
「そのままでいいではありませんか」
そう言ってみたが、不満げだ。
この人(?)、結構子供っぽいよなー、と思う。
ひとつ溜息をついて、成子は言った。
「じゃあ、いいですよ。
なにもしないのなら。
……いや、わかりました。
では、手をつないで寝ましょう」
神の視線に押されて言ったが、神様と手をつないで寝るとかどうなんだ、と思っていた。
ある意味、無礼ではないのだろうか。
だが、これ以上は譲れない。
「手をつないで眠る。
こんなことは初めてだよ」
共に横になった神はそんなことを言ってくる。
「いつもなにしてたんですか……」
成子、と目を閉じ、神は呼びかけてきた。
「私はお前の魂を知っている。
お前は私を知らないか」
「え……」
「なにも覚えてはいないのか」
そう言いながら、約束通り、そっと手を握ってきた。
物体としての感覚はないが、その魂の重さのようなものは手に伝わってきた。
こちらを向いた神が自分を見つめる。
少し、どきりとしていた。
「人は生まれ変わる。
だが、神はその記憶を抱いたまま、生き続けるしかない。
成子。
もう一度、私を愛して欲しい」
もう一度、と神は言った。
かつて私がこの人を愛していたことがあるというのだろうか。
わからない。
神はそっと成子の上になるように、その魂を移動させ、頬に触れてきた。
「手を繋ぐだけ、と申しましたのに」
そう彼の目を見返し、言うと、
「大丈夫だ」
と囁くように神は言う。
なにが大丈夫だ? と思っている間に、唇を重ねてきた。
「人の身体をまとわぬ私が触れても、お前には、羽根が載ったほどにも感じられまいよ」
少し寂しげなその口調に、なにも言い返せなくなる。
成子、と呼びかけ、孤独な神は自分を抱きしめてきた。
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