川のほとり

  





 その夜、成子は夢を見た。

 蛇行する川の側に男が立っている。


 姿の見えないそれは、あの神のようだった。


 成子を見て微笑む。

 成子もまた微笑み返した。


 穏やかな時間だった。


 それが恋まで到達するかはわからないが――。

 




 



 目を覚ました成子は手に何か掴んでいるのに気がついた。


 それは白い鱗だった。


 まだ夜は明け切らず、成子はそれを目の前にかざしてみた。


 斎王は神に捧げられた花嫁なのだろうか。

 最初からそのように定められていただろうか。


 いや、もしかしたら、孤独な神と、過去の何もかもから切り離された斎王が自然に寄り添うようになったのが始まりだったのかもしれない。


 そう成子は思った。


 前向きに努力しろ、という真鍋の言葉を思い出し、笑ってしまう。


 成子は枕許にある小さな塗りの箱にそれをしまった。


 中には今まで神が落としていった鱗が溜めてある。


 これがいっぱいになったとき、私は彼を愛せるようになっているのだろうか。


 いつか来るかもしれないそのときが、怖くもあり、待ち遠しくもあり。


 まだ命婦が騒ぎながらやって来ない。


 成子はもう一度、目を閉じ、胎児のように丸くなった。


 あの川のほとりの夢を思い出すように。





                            了

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