寿司を将棋に置き換える。

阿井上夫

寿司を将棋に置き換える。

まず、王将は間違いなく「玉子」である。異論は認めない。金銭的な面から大トロを想定する者もあろうが、それは本質を見失った話だ。続いて金将であるが、ここは流石に「鮪」であろう。大トロ、中トロ、赤身のいずれでも構わないが、本鮪に限定したい。銀将はなかなか難しい。米=銀シャリという禁じ手もあるが、私としては「蛸」を押す。理由は、桂馬がその曲がり具合から「海老」、香車が迷いのない直進から「烏賊」と判断した上での、消去法である。そして、角行は「雲丹」、飛車は「帆立」としたい。いずれも狙いが外れると手痛い目にあうネタである。さて、残りは歩であるが、ここは巻物で間違いないものの、それを「干瓢巻」で統一するか、「河童巻」あるいは「鉄火巻」を含めるか、悩ましいところである。個人的には「干瓢巻」で統一したい。さて、後は成りの問題を考える。「干瓢巻」の成りが「ツナ巻」というのは、少々奇を衒い過ぎている感があるので、ここは「河童巻」を選択して大人しく締めたい。「雲丹」は「イクラ」、「帆立」は「エンガワ」とする。この点については異論を呈する者があるだろうし、それは認める。ただの趣味である。しかしながら、「烏賊、海老、蛸」について、成りを「あぶり」とする流派がある点は、私のほうから異論を呈したい。ここは成る前を「蒸し」、成った後を「生」と考えるべきであろう。「鮪」については赤身から中トロ、または中トロから大トロでよいと思う。最後に、待ったは「ガリ」、王手は「アガリ」とする。以上、寿司を将棋に置き換えてみたわけであるが、これに何か深い意味でもあるのかと問われると、実は全くないのだから、誠に恐れ入った話である。

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