ガチな恋はガチ恋 寿司の恋は寿司恋

茅葺和尚

とある回転寿司店にて

 気がつくと、彼は隣にはいなかった。


 ここはどこだろう、辺りを見回した。人、米などが見える。先程までいた冷凍庫の中ではないようだ。私は思い出した。ああそうか、私は寿司にされるのか。


 私はサーモン。昨夜、この回転寿司店に運ばれて、さっきまで店の冷凍庫の中にいた。でも私は別に不幸だとは思ってない。運命の魚との出会いがあったのだ。彼はマグロという。冷凍庫の中で出会った、綺麗な赤色がとてもかっこいい魚だ。そして私は彼の姿を一目見た瞬間、恋に落ちてしまった。私は狭く暗い空間の中で必死にアプローチをかけた。すると、彼の方も、私のことを、肌に艶があり、とても綺麗だ言ってくれた。とても嬉しかった。こうして私たちは、幸せな夜を過ごした…


 でも、もう彼はいない。そう、彼はもう寿司にされてしまったのだ。こうなる事はお互いわかってたはずなのに、それでも、納得しきれずにいた。


 彼のことを考えているうちに、私も、人間の1口サイズにカットされ、寿司にされてしまった。回転レーンに載せられ、動いていく。


 と、そこで、私は彼の姿を、確認した。


 彼は私よりもお皿約3個分前にいた。彼も私に気づいたらしく、私に何か伝えようとしている

 …が、その時、悲劇は起きた。


 彼の前の人間の若い男性が、彼の皿をとり、彼を食べてしまったのだ。「醤油つけないで食べるの??」と声がする。カウンター席の男性の奥に座っている若い女性のものだろう。私にとっては醤油の有無などどうでもいいことなのだ。などと考えていると、「じゃあ私はサーモン食べよっかな」という声が聞こえてきた。先ほどの女性のものだ。


 そうして女性は、私の皿をとった


 私は食べられる直前、男女のほうを見た。とても仲の良さそうな恋人同士に見えた。私も彼と、こんな幸せなカップルになれたらと思うと胸が痛い。でも、こんな運命も悪くないと思った。だって、


 私たちの想いは、今も、カップルを通して、生きているから……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ガチな恋はガチ恋 寿司の恋は寿司恋 茅葺和尚 @totan_yane_1919

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ