第15話レベルアップ!
初心者講習会二日目。
俺たちは第一階層1区を越えて2区まできていた。
本日の予定は2区にある泉まで探索してから、地上に戻ることになっている。
泉は飲むことができる数少ない迷宮の水場となっていた。
生活魔法や水魔法を使えるメンバーがいたとしてもパーティーは必ずと言っていいほどここで給水する。
魔法を使えるメンバーが負傷したり、死んでしまえばそこまでだからだ。
人間は水があれば2週間以上生きられるが、水がなければ3日で死の危機に直面するそうだ。
水場の場所を記憶するのは冒険者にとって必要欠くことのできない知識だった。
各種魔物の弱点と倒し方、トラップの外し方と張り方などのレクチャーを受けながら俺たちは濃密な時間を過ごしていた。
「…と、このようにキラー・ビーには炎の攻撃が有効だ。これは他の虫系の魔物にも言える。虫の翅は非常に燃えやすい物質で出来ているからな。翅さえ奪えば奴らの機動力は格段に落ちるし、片方の翅だけ損傷させればバランスを崩すので自滅も期待できる。キラー・ビーの針は買取素材だから解体の仕方を説明するぞ」
ベテランたちはナイフを使い、器用に解体していく。
次に新人たちも解体作業を体験する。俺は素材錬成のスキルを発動しながら作業したので非常に上手に解体できた。
あまり人を褒めないクライドも自分より上手いと認めてくれた。
「さて、休憩にするか」
クライドの言葉に、待ってましたとばかりに新人たちの顔が輝く。
俺もゴブのリュックからおやつを取り出した。
もちろんメグの分もだ。
今回のおやつはメリッサさんに教えてもらった店のマロングラッセだ。
ブランデーの芳香がたまらない。
ところで俺のカンテラは魔道具だ。
そんなに珍しいものではない。
街の道具屋で3000リムくらいから売っていて、広く一般家庭でも電気のように使われる魔道具だ。
最低のIクラスの魔石で300時間くらいは光り続ける。
光らなくなったら魔石を新しくすれば再利用も可能だ。
スイッチのオン・オフができて水に濡れたとしても問題なく光る。
電気じゃなくて魔力をエネルギーとしているからね。
光量も申し分ないのでほとんどの冒険者はこのカンテラを利用する。
両手の自由を確保するために光魔法を利用する冒険者もいるが、そちらは例外だ。
戦闘時も床において相手側を照らせるような作りになっている。
今、休憩のためにたまたま壁際にそのカンテラを置いたのだが、その時初めて光に照らされて小さなキノコを見つけた。
長さは1センチほどで、エノキダケのように細い。
色は鮮やかな赤で見た目はかなり毒々しかった。
キノコは床と壁の間から産毛のように生えている。
「そいつは毒のある紅カス茸だ。触っても大丈夫だが食べるとひどい下痢をするぞ。食料を使い果たした冒険者がそれを食べて、下痢便にまみれて死んでいるのが毎年見つかるんだ」
クライドが嫌な話を教えてくれた。
だが、何かの素材になるかもしれないと思い鑑定をかけた。
鑑定
【名称】紅カス茸
【種類】菌類(有毒キノコ)
【効果】大量に摂取すると下痢が止まらなくなり脱水状態で死亡する場合もある。
【属性】水
【備考】地下迷宮に生えるキノコ。発毛剤の材料になる。
ビンゴだ!
発毛剤とはまた売れそうな薬の材料になるものだ。
俺は大急ぎで紅カス茸を採取した。
メグもおやつのお礼に手伝ってくれたので結構な量を集めることが出来た。
「イッペイさん毒キノコなんて何に使うんですか?」
「夢の薬の開発だよ。もちろん危ないドラッグとかじゃなくて、病気の治療薬ね」
現代日本で薄毛は保険適用外なんだけどね。
「本当にイッペイさんは多才ですね。どうして冒険者をやっているのかやっぱりわかりません」
そう言いながらも、メグは楽しそうにキノコをとってくれた。
メグがかわいい指でキノコをつまんで採取する。
ごめん!
今俺はいけない想像をしてしまった。
一生懸命頑張ってくれてるのに、本当に男ってバカなんだよね。
回廊が途切れてテニスコートほどの広さの部屋になった。
部屋の中央には直径2mほどの石造りの丸いプールがあり水が噴水のように湧き出している。
俺たちの他にも休憩をとっているパーティーが3ついて、迷宮のちょっとした憩いの場になっていることがよくわかる。
「ここが今回の目標地点、レビの泉だ。各自水を補給しておけ」
クライドの言葉に従い俺も水筒に水をくんだ。実はこの泉の水も発毛剤の材料になるのだ。
ゴブに持たせている水筒にもたっぷりと水を汲んでおいた。
素材は取れるうちに取っておかないとね。
帰りも来た時と同じルートで帰る。
違うルートでも帰れるのだが、道の確認のためにわざわざ同じルートで帰るそうだ。
同じ道でも往路と復路では印象が大分違うのでびっくりした。
帰り道でも同じようにいろいろな種類の魔物を狩り、解体の仕方を学んだ。
今回の講習で俺の倒した魔物は、ゴブリン×2、キラー・ビー×1、オオコウモリ×1だった。
オオコウモリからはIランクの魔石がでた。
そういえば経験値は貯まっただろうか?
確認してみよう。
ステータスオープン
【名前】 宮田一平
【年齢】 27歳
【職業】 無職
【Lv】 1
【状態】 身体強化×10 (残り時間 00:54:28)
【HP】 80/80
【MP】 998148/999999
【攻撃力】30(+211) ハンドガン
【防御力】50(+28) 革の軽鎧、革の帽子、革のマント、
【体力】 40
【知力】 1480
【素早さ】50(-4)
【魔法】 生活魔法 Lv.max、回復魔法Lv.max
【スキル】料理 Lv.max 素材錬成マテリアル Lv.max 薬物錬成 Lv.max
鍛冶錬成 Lv.max 鑑定Lv.max ゴーレム作成Lv.max 道具作成Lv.max
射撃Lv.6(命中補正+6%) 詐欺師Lv.2
【次回レベル必要経験値】 4/100000
……。
……なんだよこれ。
経験値が4しか入ってない。
…レベルアップは絶望的なのか?
それとももっと強い敵を倒さないとだめなのか?
少なくとも1階層の入口付近で狩りをするなら、後9万9千9百9十6匹の魔物を倒さないとダメなようだ。
……1階層でのレベルアップは諦めよう。
出口が近くなる頃ジャンのやつがギルドカードを振りながら「レベルが上がった!」と叫んでいた。
その後、続々と新人のレベルが上がっていく。
メグのレベルも上がった。
俺もさらにもう1体、ジャンボ・ホッパーを倒したが当然レベルは上がらない。
そんな時だった。
誰かが俺の袖を引っ張った。
「うが!」
ゴブ1号 お前もか……。
【名前】 ゴブ1号
【年齢】 0歳
【Lv】 5
【HP】 167/167
【MP】 0/0
【攻撃力】49 (+128)連射式クロスボウ
【防御力】145 (+65)アイアンメイル、ヘルメット
【体力】 322 (-5)
【知力】 18
【素早さ】38 (-10)
【スキル】灯火Lv.2 目の部分が光って辺りを照らす。
【備考】 半自立型ゴーレム。行動には3MP/分が必要。MPチャージは180まで。よって主人から1時間以上離れて行動できない。半径3メートル以内に主人がいれば魔力をチャージすることが出来る。
【次回レベル必要経験値】 14/800
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