第4話 自家製は武器からワインまで

草原の朝は不思議なほど透明だった。

遠くにそびえる山々の陰影いんえいがくっきりとしている。

 俺とパティーは銀嶺草(ぎんれいそう)を取りにエステラ湖を目指していた。

銀嶺草は身体強化ポーション(10倍)を作るための材料だ。

他の諸々の素材は歩いている途中に採取できたが、こればかりはエステラ湖畔にしか咲いていないそうだ。

身体強化ポーションを使えば俺のステータスは、


【HP】 80/80

【MP】 999999/999999 (強化上限を超えているので変化なし)

【攻撃力】30

【防御力】50

【体力】 40

【知力】 1480 (強化上限を超えているので変化なし)

【素早さ】50


となり、冒険者登録要件の最低ラインをクリアすることができる。

攻撃力など本当にギリギリの30だ。

身体強化(20倍)のポーションもあるのだが必要な材料がダンジョンの地下7階にあるというので諦めた。

パティーは俺がやった剣を嬉しそうに振り回している。

「本当にイッペイも行くの? ネピアに送り届けた後、私がとってきてあげてもいいんだよ」

申し出は嬉しかったが銀嶺草は今後も頻繁に使う予定の素材だ。

生えている場所や形態を知っておきたいので自分の目で確かめておくに越したことはない。

「エステラ湖の辺りに魔物はほとんどでないけど、いざ戦闘になったらイッペイを守りきる自信はないからね」

「わかってるよ。俺だって準備はしてるさ」

歩きながらも俺は素材を集め錬成を繰り返している。

先ほどスモールシールド(防御力+7 素早さー1)を完成させて装備したばかりだ。

防御力は少し上がったが、素早さも1下がってしまった。

これでもかなり重量を抑えて作成したつもりだ。

素早さが0以下になったら満足に動けないのだろう。

次もなるべく重量のかからない装備を作らねばならない。

軽量化と堅牢性のバランスはいつの時代も職人を悩ませる。

そこが腕の見せ所でもあるけどね。


 昼近くになってボトルズバイソンという牛の群れに遭遇した。

7頭くらいの群れでのんびりと草を食べている。

ボトルズとはこの国の名前で、牛はこの地域に住む固有種だそうだ。

パティーは嬉々として背中に背負った弓をおろした。

「本当は子牛が美味しいんだけどね、ここは無難にオスを狩るわ。イッペイは邪魔だからここで待っていてね」

獰猛な笑みを浮かべてパティーは狩りに向かった。

「オスを狩るわ」といわれた時、俺の大事な部分が縮み上がったのは内緒だ。

でもあの感じ……嫌いじゃないかも。

身をかがめて風下にまわるパティーを見送って、俺はその場に腰を下ろした。

基本の武器は銃器と決めているが今は素材が足りなくて作れない。

だからといって丸腰は不安だ。

そこでクロスボウを作ってみることにした。

取り回しがよいように小型のものがいいだろう。

ここで問題になるのはやっぱりバランスだ。

小型化の代償にパワー不足を受け入れなくてはならない。

万能の武器というはなかなか作れないんだね。

道中でよくしなる木を見つけたので、素材錬成で切り出しと乾燥までを既に終わらせてある。

連弩と呼ばれるクロスボウを作成した。

これは連射ができるが威力は弱い。

左手で持ち、右手でレバーを倒して発射する構造にした。

威力を上げようとするとレバーが重くなり狙いがつけづらくなるので、弓の両端にカム(滑車)をつけて威力を上げる工夫をしてみる。

矢は短い鉄製のボルトを本体上の弾倉に10本装填できる。

遠くのものは狙えない。

中近距離用の武器だ。


鑑定


【名称】連弩

【種類】クロスボウ

【攻撃力】68

【属性】無し

【備考】連射式クロスボウ。 最大有効射程18メートル。スキル 「射撃」の習得が可能になる。


 悪くはない。

むしろパティーの持っていたロングソードより威力はある。

だが一撃必殺感がまるでない。

盾などにはじかれそうだし、何発かくらわさなくてはならなさそうだ。

いっそ毒矢にしてみよう。

さっき見つけたベラドナス(毒草)から毒を抽出して矢に塗ってみる。



鑑定


【名称】連弩

【種類】クロスボウ

【攻撃力】128

【属性】無し

【備考】連射式クロスボウ。 最大有効射程18メートル。スキル 射撃の習得が可能になる。


おお、いい感じじゃないか。

どれどれこいつを装備してステータスオープンだ!


【名前】 宮田一平

【年齢】 27歳

【職業】 無職

【Lv】 1

【HP】 8/8

【MP】 997712/999999

【攻撃力】3(+128) 括弧内は武器の能力

【防御力】5(+7)

【体力】 4

【知力】 1480

【素早さ】5(-1)

【魔法】 生活魔法 Lv.max、回復魔法Lv.max

【スキル】料理 Lv.max  素材錬成(マテリアル) Lv.max  薬物錬成 Lv.max

鍛冶錬成 Lv.max  鑑定Lv.max  ゴーレム作成Lv.max  道具作成Lv.max

射撃Lv.0(命中補正+0%)

【次回レベル必要経験値】 0/100000 


おお! ちゃんと攻撃力に反映されているぞ。

スキルもついいてる。

おそらく練習すればスキルレベルが上がるのだろう。

いい感じだ。


「さっきから何を作っているの?」

巨大なボトルズバイソンを軽々と引きずりながらパティーが戻ってきた。

「武器を作ったんだけど威力に難があってな。毒矢にしたら攻撃力があがったぞ! 早速俺も猟をしてみようかな」

「ばか! 毒矢で仕留めたら肉が食べられないでしょ!」

言われてみればその通りだ。

「さっさと解体を手伝ってよ。まったく、すごいのかバカなのかよくわかんないんだから」

酷い言われようだが返す言葉もない。

狩猟用には麻痺矢を作る必要がありそうだな。


 昼飯はボトルズバイソンのグリルにした。

素材錬成スキルで肉を熟成させてから焼く。

塩と採取したハーブだけのシンプルな味付けだがパティーは大喜びだ。

でも焼き串の代わりにクロスボウのボルトを使ったことに気づいたパティーが嫌な顔していた。

大丈夫だよ。毒は塗ってないやつだから。

 皮も素材錬成でなめして、リュックサックにした。

空間収納みたいなのが使えればとしみじみ思う。

それでも素材でパンパンに膨らんでいたポケットがスッキリしたので良としよう。


 エステラ湖まで魔物はいないだろうといわれていたが本当にのんびりした旅になった。

野生のブドウを見つけたので、牛の革で革袋をつくって果汁をとったり、ノビルのような野生のネギを見つけたので採取したりと、俺たちはハイキングのように旅を楽しんだ。

回復魔法のおかげで全然疲れないので満喫できるのだ。


「ときどき革袋を取り出しているけど、なにしてるの?」

「錬成スキルでワインを作ってるんだ。熟成の進み具合で魔力の籠め方が微妙に変わるんだよ」

「そういうとこマメよね」

「どうせなら美味しいワインを飲みたいだろう」

「そうだけど、旅の間は飲ませないわよ」

「冒険者の心得か?」

「そう。野営の最中にお酒は厳禁よ」

「わかった。こいつは煮込み料理に使うさ」

「うん。それは楽しみ」

俺たちは何気ない会話を楽しみながらエステラ湖を目指した。

【属性】無し

【備考】連射式クロスボウ。 最大有効射程18メートル。スキル 射撃の習得が可能になる。


おお、いい感じじゃないか。

どれどれこいつを装備してステータスオープンだ!


【名前】 宮田一平

【年齢】 27歳

【職業】 無職

【Lv】 1

【HP】 8/8

【MP】 997712/999999

【攻撃力】3(+128) 括弧内は武器の能力

【防御力】5(+7)

【体力】 4

【知力】 1480

【素早さ】5(-1)

【魔法】 生活魔法 Lv.max、回復魔法Lv.max

【スキル】料理 Lv.max  素材錬成マテリアル Lv.max  薬物錬成 Lv.max

鍛冶錬成 Lv.max  鑑定Lv.max  ゴーレム作成Lv.max  道具作成Lv.max

射撃Lv.0(命中補正+0%)

【次回レベル必要経験値】 0/100000 


おお! ちゃんと攻撃力に反映されているぞ。

スキルもついてる。

おそらく練習すればスキルレベルが上がるのだろう。

いい感じだ。


「さっきから何を作ってるの?」

 いつの間にか猟を終えたパティーが戻ってきていた。

「武器を作ったんだが威力に難があってな。毒矢にしたら攻撃力があがったぞ! 早速俺も猟をしてみようかな」

「ばか! 毒矢で仕留めたら肉が食べられないでしょ!」

言われてみればその通りだ。

「さっさと解体を手伝ってよ。まったく、すごいのかバカなのかよくわかんないんだから」

酷い言われようだが返す言葉もない。

狩猟用には麻痺矢を作る必要がありそうだな。


昼飯はボトルズバイソンのグリルにした。

素材錬成スキルで肉を熟成させてから焼く。

塩と採取したハーブだけのシンプルな味付けだがパティーは大喜びだ。

でも焼き串の代わりにクロスボウのボルトを使ったことに気づいたパティーが嫌な顔してた。

大丈夫だよ。毒は塗ってないやつだから。

 皮も素材錬成でなめして、リュックサックにした。

空間収納みたいなのが使えればとしみじみ思う。

それでも素材でパンパンに膨らんでいたポケットがスッキリしたので良しとしよう。


 エステラ湖まで魔物はいないだろうといわれていたが、本当にのんびりした旅になった。

野生のブドウを見つけたので、牛の革で革袋をつくって果汁をとったり、ノビルのような野生のネギを見つけたので採取したりと、俺たちはのんびりと旅を楽しんだ。

回復魔法のおかげで全然疲れないのがよかった。


「ときどき革袋を取り出してるけど、なにしてるのよ?」

「錬成スキルでワインを作ってるんだ。熟成の進み具合で魔力の籠め方が微妙に変わるんだよ」

「そういうとこマメよね」

「どうせなら美味しいワインを飲みたいだろう」

「そうだけど、旅の間は飲ませないわよ」

「冒険者の心得か?」

「そう。野営の最中にお酒は厳禁よ」

「わかった。こいつは煮込み料理に使うさ」

「うん。それは楽しみ」

俺たちは何気ない会話を楽しみながらエステラ湖を目指した。

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