第18話 バレないように

「とりあえず、動いてみなきゃ何もわからないしね」


 自分を納得するために言っているのだろう。

 マナブの表情は、少し晴れ晴れとしていた。

 その表情に戸惑いの色も隠せずにいたけれど、俺はあえて触れないでいた。


「早い方がいいし、早速今日の放課後にでも行ってみる?」

「そうだな。そうするか」

「じゃー、決まり。ハジメや特にヒビキには勘付かれないように行ってみようか」

「あぁ」


 そうこうしていると、校舎が見えて来た。

 相変わらず見られない。

 思わず表情が硬くなってしまったが、マナブに「大丈夫」だというように背中を叩かれ、一歩一歩前へ歩いて行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今日の授業は、現社もないので特に気を張ることもなく放課後を迎えた。

 昨日みたいな襲撃も起こらなかった事がせめてもの救いだろう。

 

 帰る支度をし、隣の席のマナブと目を合わせ2人同時に席を立った。

 出口に向かって歩き出そうと瞬間、ハジメが声をかけた。


「おーい、2人揃って珍しいな。どこ行くんだよ? 一緒に帰ろうぜ」


 無邪気な顔で話しかけてくるハジメを見る。

 正直、今は気付いて欲しくなかった。

 マコトは彼になんて伝えればいいのだろうと、必死にこの場を逃れる言い訳を考えていたのだが上手い言葉が思いつかなかった。戸惑いの色が顔に出てしまいそうだ。


「ゴメン。今日はパス。急に塾の講習が入って急がなきゃいけないんだ」


 思わずビックリしてマナブの方を見てしまう。

 それに気付いたのだろう。

 ハジメに見えないように、マナブが背中を叩いてくる。

 叩かれた痛みで、苦痛の表情になってしまうのをこらえてあくまでも平然を装った。


「なんだー、そっか。2人ともか。じゃー今日はここで解散だな。また明日な!」


 そう言って、ハジメは荷物を持ちヒビキの方に向かった。

 何やら話をつけ、2人で帰る事になったようだ。


 マコトはホッとして思わずため息をついてしまう。

 そんなマコトの様子を見ていたのだろう。

 マナブが「行くよ」と声をかけ、足早に教室を出て行ってしまう。

 

 マコトもマナブの後を追い教室を後にしたのだった。


「あんまり挙動不審な態度とるとバレるよ」


 学校を後にした帰り道、俺たちはバリアが張られている縁を目指して歩いていた。

 さっきの事を言っているのだろう。

 呆れた顔をしたマナブが声をかけた。


「悪かったよ。あまりにも突然だったから」

「ああいう事はこれから何度だって起こるかもせれない。その度に言葉に詰まってたら不審に思われるから、少しずつ慣れて言って」

「あぁ、わかった」

「特に、ハジメはああ見えて感がいい方だから。マナブうっかり漏らさないように気をつけなよ」

「………ぁあ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕らが僕らでいること 七詩みしろ @knid

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ