街を作るということ。

愛知川香良洲/えちから

街を作るということ。

 マインクラフトというゲームがあります。

 元々はPC用として開発された海外製のゲームで、家庭用ゲーム機やスマートフォンなどにも機能を一部制限して移植されています。簡単にいえば、立方体のブロックを基本に構成された世界で生活するという内容でしょうか。オンラインで他のプレイヤーと一緒に遊ぶマルチプレイも出来るため、日本ではニコニコ生放送を中心に生活するサーバの住民を募集していたり、鬼ごっこなどのゲーム企画が行われていたりします。新要素を追加する「モッド」や「プラグイン」というものが開発されているため、大抵のことは出来る自由度の高いゲームだと、個人的には思います。

 さて、本題に入りましょうか。

 マインクラフトでは、よく街が形成されます。むしろ街を形成することを目的とするマルチサーバもあるほどです。その種類は大きく三つに分類されます。

 一つ目、生活サーバにおける自然発生的な街。

 生活サーバはサバイバルモードが基本です。空腹と体力の概念があり、材料も自らの手で集めていかなければならないため、拠点が必要となってきます。複数プレーヤーの拠点が集まることで、そこには街が生まれていきます。特にマルチプレイでは各々が特徴的な拠点を作ろうとするため、様々な建物が立ち並ぶようになります。自分が参加している生活サーバ・ジパングサーバにある各都市も、そんな建物の集まりです。

 若干方向性は異なりますが、街の形成を意図した生活サーバが開かれていることもあります。例えばYussanさんがニコニコ生放送で開いている生活サーバには公共事業という概念があり、資材の売買やゲーム企画で稼いだお金を投資することで設備が充実していきます。生活サーバの特徴がそこに加わることで、より発展した街へ移り変わっていくことでしょう。

 二つ目、クリエイティブモードによる架空都市。

 マインクラフトには材料をほぼ自由に取り出せ、空中飛行などが出来るクリエイティブモードがあります。それを利用して作られた一番の例が、舞倉市でしょう。

 舞倉市は二年以上の歳月をかけ、シングルプレイで作られている大都市マップです。高層ビルやマンション、商店街、スタジアムや病院、空港などまさに都市機能が詰め込まれています。実在の建物をモデルにした建物もありますが、街全体としては一つの架空都市でしょう。

 架空都市の作り手として他に自分が思いつくのは、「純太」さんでしょうか。ガソリンスタンドや信号など、参考になるなぁと思いました。

 三つ目、実在の街の再現。

 クリエイティブモードで、実在の街を再現するというマップ。

 今回の「Striking Anew」のテーマが「街」に決まって、真っ先に思い当たったのが京都再現プロジェクトです。二メートルを三ブロック分とし、京都市街をマインクラフト上で再現していくという、ぽりふぇさんの企画。プレイヤーの身長はおよそ二ブロック分ですから、ほぼ実寸で作っているということになります。グーグル・アースやストリートビューで実際に住んでなくても調べられることが出来る環境が整って、初めて出来ることでしょう。もちろん、内装などについては実際に調べないと難しい部分はありますが。そういえば去年の文学研究会の合宿は京都でしたね。その時に訪ねた京都駅前の印象と再現された街の印象がほぼ変わらず、驚くほどでした。まだまだ未完成のプロジェクトですが、一見の価値はあると思います。

 有名な所ではヴェネツィアの再現が上げられるでしょうか。

 他にも新宿や池袋、イタリア・ミラノを再現しようとしている企画を見たことがあります。またこれは実在の街といえないかもしれませんが、「進撃の巨人」というアニメ化された漫画作品の「シガン・シナ区」やポケモンのワールドを再現する企画などもありますね。「シガン・シナ区」は既に完成して、ワールドがダウンロード出来たはず。変わった所ではデンマークの政府が自国をまるまる再現したということもあるようです。自分の参加するジパングサーバでも「ブルボン本社」を再現した建築がありますね。また「街」という概念からは外れますが、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、アップル本社の再現なども行われています。

 ここで気になったのは、どこまで再現すれば「実在」の建物や街と認識されるかです。もちろん一メートル当たりのブロック数を増やせば増やすほど、再現度はあがります。しかし同時にデータ容量が大きくなり、またそのワールドでイベントを行うといったことが難しくなっていきます。どこで折り合いをつけるかが、発案者の腕の見せ所でしょう。そういう意味も含め私は、京都再現プロジェクトに感動すら覚えました。

 自分もVPSを借りてマルチプレイ用のサーバを立て、愛・地球博の再現をしようかと考えています。一番に困ったのが、再現するサイズでした。当然、前述の問題がつきまといます。散々悩んだ結果、現存する「アルモノ」を再現出来るサイズに合わせようと思っています。

 つい先日、その「アルモノ」を実際に作ってみました。「MLX01-1」、愛・地球博の超伝導リニア館に搬入され、現在はリニア鉄道館に展示されている、鉄道の世界最高速度のギネス記録を持つ車両です。思いつきでささっと作ったので寸法は正確でない部分がありますが、幅二・九メートルの所を七ブロックで製作しています。すると大体、一ブロック当たり〇・四メートルになります。

 少し大きめですが、まあそれぐらいがちょうどいいのでしょうか。悩みながら、再現プロジェクトを始めていきたいと思います。完成目標は閉幕十周年となる来年九月(編注:二〇一五年九月。実現せず)。上手く行って欲しいなと願いながら、まずは地形再現を。幸い、世の中には地形図や都市計画基本図というものがありますからね。


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街を作るということ。 愛知川香良洲/えちから @echigawakarasu

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