第6話
父に
ぼくは、あこがれていました
あなたの、大きな靴の音に
もう五十年よりも、まだ前です
ぼくは、あなたに手を引かれて
かわいい帽子をかぶって
よくお出かけをしました
そう、あのしんちゃんがひかれた場所から
バスに乗って
そのとき
あなたの靴は、ちょっと緩い舗装をされた
道路の上を歩くとき
「ぎゅっ、ぎゅっ」
と、とても大きな、いい音を出したのです
ぼくは、なんとかして
ぼくの小さな靴で
同じ音を出そうとして
いっしょうけんめいに
頑張りました
でも、どうやっても
同じ音は、出せなかったのです
あなたは、学歴こそなかったけれど
あの会社の中では、もうこれ以上は上がれない
というところまで、上り詰めました。
あなたは、真っ赤な鉄が流れ落ちる危険な場所で
必死に働きましたね
母のために
ぼくのために
(それでも、有名大学を出た方は
・・・十年もたたずに
あなたを追い越してゆきましたが)
ぼくは、結局のところ
あなたには、届きませんでした
最後には、挫折しました
でも、まだこの世の中で
踏みとどまっています
お父さん
孫をつくれなくて
申し訳ございません
深く、お詫びいたします
いつまでも
お母さんといっしょに
仲良く、楽しく、天国で暮らしてください
そうして
やがてあなたたちの元に
また、ぼくを、受け入れてくれますか?
(奥さんが、ずっと後から、一緒にきてくれたら
ちょっと別居するかも、しれないけれどね・・・)
永遠に、安らかに
おとうさんへ
謝罪詩編集 やましん(テンパー) @yamashin-2
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