もし僕がロングシュートを決めたら

 もうすっかり暗くなったのに、体育館の窓からは明かりが洩れ、ボールが勢いよく弾む音とハツラツとした声が聞こえてくる。


 母校のバスケ部だ。

 この地区ではそれなりの強豪で、当然練習も厳しく、いつも遅くまで練習している。僕たちの代のバスケ部も強かった。トロフィーを何個も取っていたような気がする。

 朝礼で校長に何度か褒められていたバスケ部の連中の姿がふい頭に浮かんだ。


 勉強は出来なかったけど、親分肌でバスケ部以外の生徒にも信頼されてたアキラ。

バスケだけじゃなく成績も優秀で綺麗な顔をして肌も白くモテまくってたカッちゃん。補欠だったみたいだけど、いつもみんなを盛り上げてたウッチー。


 三人を中心にバスケ部はいつも明るく目立つ存在だったように記憶している。

僕は野球部に入ったが、練習のキツさにさっさと幽霊部員となってしまったので、いつも同じように部活に入ってない友達とテレビゲームをしたり自転車で遊び歩いたりしてた。

 そんな僕達とは正反対に、バスケ部は休みも無く休日も祝日も練習をしていた。


(そんな生活、俺には無理だなぁ)


 当時も、夜の中学校の前を通ると、体育館の明かりを見上げてはそう思った。でも、彼らの青春の全ては部活だったのだろう。


 僕にはその経験はない。試合に負けて悔し泣きするほどの経験もない。

 ゴールを決めて嬉しくて飛び跳ねる経験もない。

 辛い練習を耐えた仲間と肩を叩き合った経験もない。


 僕が中学時代にしていたことと言えば、ゲームセンターのコイン返却口に取り忘れのお金がないか何十軒もハシゴしたり、私立の女子校の文化祭に忍び込んで怒られたり、自転車で江ノ島まで行って、帰りに居眠り運転して自転車大破させて一人だけ電車で帰ったり、そんなどうしようもないことばかりだ。


 しっかり正統派の青春をしているバスケ部の奴らの青春はとても輝いて見えた。

バスケ部の奴らは大人になって同窓会で久しぶりに会った時でも、昔と同じ絆で結ばれている気がした。きっと『友達』よりもどこかもう少し深い『仲間』という絆で彼らは結ばれているのだ。


 目の前の体育館で走る名も知らぬ後輩達はきっと奴らの『絆』を受け継いでいるのだろう。


 そんな事を思いながらアスファルトを踏みしめる。

 ポケットの携帯が震えた。


「おう、何してんだ? 新しいゲーム買ったからやろうぜ。ビール買ってこいよ」


 いまだにつるんでいるダチからの電話に苦笑いしながら「わかった」と答え、ポケットに手を突っ込み歩き出す。


人生、色々。


青春も色々。

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ボンゴレ☆ビガンゴの日常 ボンゴレ☆ビガンゴ @bigango

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