メイド型ロボットは市長のために巨大ドリルをぶん回す。

犬ガオ

FC-MD 用語集


「地球という星から、我らはやってきた。星を作り替える術を得た我々は、あらゆる宙域に住める土台を探すため、マザーコアライザを送り出した。そして、それら、『星の台座』を見つけた」


星の台座アーキスター

 ヒトの生存可能な星となる可能性がある星を指す。

 星の台座となる条件はマザーコアライザの性能に依存しているため、一定ではない。それこそ、ピンからキリ(疑似太陽系から、気体惑星でないこと)まである。

 しかし、ヒトの住環境としては、星の台座が十分な質を持つことは重要となる。



 かみさまはいるよ。

 あのお月様に。

 三角がいっぱいの、あのお月様に。


【マザーコアライザ】

 星を作り替えるために作られた、巨大世界素生成装置。

 月の四分の一程度の大きさの正二十面体。

 一人称永久機関(無限エネルギー)に、世界素生成機(無限物質)、自己参照複製型Dメモリー(劣化しない無限メモリー)という、自己完結存在。

 星間移動能力を持ち、宇宙を旅して星の台座を見つけると、百年ほどかけて星を作り替える。

 コアライザ、世界素、Dメモリーを生成できるのは、マザーコアのみである。

 また、マザーコアライザは完結存在のため、自己参照による存在確認時に星が必要ないと判断する危険性があった。

 そのため、マザーコアライザ自体が星を求める理由として、ヒトを乗せることが必要となった。




『あ、ごめんなさい。名乗り忘れてました』

『私、この星の管理者をしている、E-10099と申します』


【管理者】

 マザーコアライザの存在を管理するために、マザーコアライザに乗船するヒト。

 永久冬眠とDメモリー化処理が行われるため、マザーコアライザが消滅しない限り、存在がなくなることはない。

 選ばれるのは、後述するの理由のため、女性が多くなる。

 永遠に近い命であるため、暇をもてあましてクローン体にDメモリーを乗せて、都市に遊びに行く管理者も多い。




「ああ、貴方が私たちの母なる母様でしたか」

『うーん、産んだことはないんだけど、そうなるのかな』

「ええ、貴方の遺伝子で私たちは生まれたのですから」


母なる母マザー・マザー

 管理者の別名。

 マザーコアライザは、星を作り替えたあと、外部からの入植のほかに、その星の住民を作成する必要があった。それは、星の環境に耐えられる遺伝子を作るためとも、進化の可能性を高めるためとも言われている。

 その原住民を作成する方法として、管理者の遺伝子から作成した人工卵子と、Dメモリー内に保存されている、その星に最も適した遺伝子から作成した人工精子を合わせることが一般的に用いられる。

 そのため、管理者は母なる母と、星の住民から呼ばれる。

 ちなみに、頑張った子にはご褒美としてフレームとかDメモリーをあげるので、やっぱりお母さんである。




「え、ってことは神様?」

『神様ってほどじゃ……』

「こんなちんちくりんが?」

『……この都市、潰そっかな』


【神様】

 管理者の神格化した別名。

 星内に存在する都市を統括する意味での管理者である彼女達は、支持率が低下している都市に対して助け船を出す。

 しかし、支持率が持ち直せない状態となった場合、都市自体を解体することがある。

 マザーコアライザを用いたその正確無慈悲な解体とは、生物に存在する以外の世界素を消去することであり、神の裁きともいえる御技である。




「人々は都市で生き、都市に日々という記憶メモリーデイズを預ける、か」


【都市】

 人が住む場所であり、文明、文化を維持し、自治する最小単位。

 市長と議会により運営される。

 市長と議員は、後述するオートマトン所有者から選ばれることが多い。

 人々は自分の日常を、既得権を守る存在しか支持しない、というのが最大の理由だ。




「市長、この商業省から新しいビル区画が欲しいと要望が」

「またか……。フレームの余剰は?」

「2つほどありますが、アカネ議員がオートマトンの強化に使いたいと」

「却下で」


【フレーム】

 素粒子練造学より生まれた、世界素(W.E.)をパッケージング化したもの。

 Dメモリー内の設計図により、形、重さなどが大幅に変わる。

 大体4~6フレームで都市の一区画分に相当する。

 世界素を放出していない場合、黒い正三角形の板となる。

 コアライザと紐付いている場合、二十面体の形となっているコアライザの一面に接着している。




「世界素の錬造により、世界を思い通りに造れるようになった。その結果が都市だ。人々が望む小さな箱庭世界、それが枠組みだけの都市フレームシティ。そして、その運営者がお前たち、議会と市長というわけだ」


【世界素】

 またの名を万物素。

 ナノマシンの一種とも言えるが、その大きさは桁違いに小さい素粒子レベルの高性能代替素。

 初期状態では相互作用を持たないため、重さはない。

 コアライザによりひも付けされたDメモリーの情報により、生命以外のあらゆる物質に変貌する。

 ただし、フレーム単位を超える空間まで大きい物質にはなれない。

 また、世界素密度が低いと、構造精度がガクンと下がり、存在がもろくなる。

 1フレーム分展開限界は1,000立方キロメートル。




「記憶は形を与え、人々を繋げ、世界を固定する。

 それが定量化されたことこそ、私はおどろくべきことと思うがね」


【Dメモリー】

 記録世界と設定された別次元の世界に保存されてある記録媒体エネルギーの総称。

 記録媒体エネルギーの流れを変えることにより、情報を記憶する。流動転写式時空記録。

 コアライザに紐付いている場合、コアライザの一面が白く発光する。

 一つのフレームにDメモリーを複数ひもづけることはできるが、その場合、フレーム展開の空間限界が二次曲線的に小さくなり、最後には0となってしまう。限度は三つというところだろう。

 オートマトンの設計図や、フレーム兵器の設計図もDメモリーに分類される。




「すげえだろ、こんなビー玉一つの大きさでこの一区画を形成してるんだぜ」

 青年が自慢気に、透明な円柱状のケースに保存されている、親指の先程度の、いくつかの面が光っている正二十面体を指差す。

「へぇー……すごいな」

 少年が関心したようにつぶやく。

「ちなみにあたちの中にも入ってるのだぜ。つまり、あたちの価値もこの一区画と同じなのだぜ」

 少年の足元にいたフィギュア型オートマトンが、胸を張りながら自慢気に話した。

「あっそ」

 少年はそっけなく答え、オートマトンは眉をピクリ、と上げた。


【コアライザ】

 黒い正二十面体。

 フレームとDメモリーをひもづける、世界間通信計算機であり、記録世界よりエネルギーを得る、一人称式永久機関。

 コアライザ一つで、都市の一区画すべてのDメモリー、フレーム、そしてエネルギーを賄うことができる。

 コアライザを多く持つということは、都市の大きさを現す一つの指標となる。

 ちなみに、一つのコアライザには、フレーム、Dメモリー合わせて20個まで紐付け可能となっている。




「私たちは、都市を守るために造られたオートマトンです。

 さあ、市長。ご命令を」


【オートマトン】

 都市議会を運営するために稼働するロボットの総称。

 その一体につき、コアライザ一つ、つまり都市区画一つ分という破格のスペックを持つ。

 また、フレーム、メモリーも合わせて平均6つ紐付けて完成するため、その世界素と情報の密度の高さを伺わせる。

 人型から獣型、大きさが存在しないものから、100メートル級の大きさまで多種多様であり、都市を脅かす外敵を排除するために活動する。

 オートマトンを所持することは、議員、もしくは市長の証でもある。




「私たちは、都市を奪うために造られたオートマトンです。

 さあ、ご主人様。ご命令を」


【違法オートマトン】

 都市が認めていないコアライザで活動しているオートマトン。

 大体は、都市を攻めてきたはぐれ議員か、傭兵ユーザーの所持物。

 議員が所持するオートマトンの存在理由の大体はこの違法オートマトンの排除である。




 その武器は巨大だった。

 高層ビルでさえも一突きでてっぺんから地上まで穿ちそうな丈の長さ、今から地下鉄を掘ると言っても嘘とは思えないドリルの直径の大きさ、そしてそれを扱うオートマトンが、人間の少女の大きさ、というのが更にその巨大さを強調している。

 ドリルが、徐々に、回り出す。奇音怪音轟音が鳴り響き、メイド服を着たオートマトンが、その超弩級の槍を構えた。

「これで、サイズ差はなしです」

 狙うは、一区画向こうにいる、天を衝く山のような図体の違法オートマトン。


【フレーム兵器】

 フレームを兵器に応用したもの。オートマトンも同じ存在といえるが、コアライザを持たないため、エネルギー供給源がないと動かない。

 オートマトンが装備して扱うが、使用する際はいくつかの代償を支払う必要がある。

 また、都市のフレームを使用するため、使用中と使用した後のクーリング時間は、フレーム兵器化した区画の都市機能が使えなくなる。

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