人外娘を人間に変身させる暴挙(眼鏡っ娘から眼鏡を奪うのに等しい)
街路のない町並みだった。
斜面に築かれ、日干し煉瓦で作られた家屋はいずれもが隣家と接しており、屋根は平たい。人々はそこを通行し、挨拶を交わし、あるいは作業をしていた。日除けに広げられた白い布が目立つ。
背後に広がるのは巨大な山脈である。その向こう側へ南下すれば海が広がっており、そのためか山々の頂上付近へは降雨が目立った。ここに街が存在できるのもその恵みあればこそである。山越えをする者たちや交易のために訪れた遊牧民の姿で賑わっていた。
今。追うものと追われるものの姿が、ここにあった。
◇
「ついてないな」
「……ぅ…」
宿の馬小屋に通された女人馬の愚痴に、女賢者の生首は返答を返した。
外は夕刻。一昼夜に渡り走り続けた彼女らは、この街へとたどり着いたのである。盗人の魔法使いもここにいるはずだった。あとは見つけて捕らえるだけ、なのだが。
何しろ
対する女賢者は人間に化けることが可能ではあるから入ることはできた。着衣があれば。荷物を置いてけぼりとせざるを得なかった彼女は今、服がない。ひとまず胴体はフクロウの姿でいさせている。生首は荷物扱いで袋詰めである。まぁこれでもかなり、待遇は良くなったが。戦いから時間が経ち、女人馬も落ち着いてきたおかげであろう。解放してくれればなおよいのだが。
女人馬の部下たちが追いついてくるにはあと丸一日は余分に必要だろう。
「なんとかできないか?」
「…ぁ……ぉ」
問われた女賢者は思案。昨夜から休息していないから魔力が心許ないがまぁ、何とかなるか。
必要な品物を要求された女人馬は、怪訝な顔をした。
「着衣を二人分?まぁ、なんとか借りてこよう」
女人馬は立ち上がると、馬小屋の外へ出て行った。
◇
「……なんだ、この頼りない下半身は。人間はみな、こんな不安定な体で歩いているのか?」
「……」
町中を行くのは二人の女である。
一人は女賢者。村娘風の衣装は借り物であった。
そしてもう一人は、槍を手にした女人馬。ただしその下半身は人間のものとなっている。
服を借りた宿の女将は目を丸くしていたが。
生まれて初めての二足歩行に、女人馬はたじたじである。
ちなみに女賢者の首はまだ袋詰めのまま。胴体を
悪戦苦闘しつつも、二人は聞き込みを開始した。
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