ティラノサウルスが鱗生えてたとかニュースでしてたんですが(ファンタジーとしての鱗だったはずが)

夜半、地下の都より出陣しつつあるのは驚くほどに統制が取れた邪悪なる怪物ども。

主力は、折れた鼻に醜悪な面構えと小柄な体躯、木槍や弓矢で武装した小鬼ゴブリン。驚くべき繁殖力を備えた彼らは闇の軍勢の中核をなす戦力と言っても過言ではない。ほぼ無尽蔵に増える彼らは邪悪で楽観的な性質である。その表情は、下卑た欲望をそのまま映し出していた。

そいつらを統率しているのは大小鬼ホブゴブリン。成体の小鬼ゴブリンである。人間以上の体躯を持つこいつらは、恐ろしいまでの腕力で完全武装の戦士と互角に戦う脅威だった。

下級指揮官として完全武装の小鬼ゴブリン・チャンピオンや羽飾りを付けた小鬼祈祷師ゴブリン・シャーマン。人間とそん色のない邪悪な知性と優れた技量を備えたこいつらは小鬼ゴブリンたちのエリートだ。

そして、3メートル、小屋ほどもある図体の巨鬼オーガァども。肉厚の体は破城槌でもなければダメージを与えるのも難しい。こいつらの集団によって城壁が突き崩されることすらある。

さらに、これら集団の中に多数見受けられるのは、鱗を備え、とてつもなく巨大な種々の魔獣ども。二本脚のもの。背中から板状のとさかを生やしたもの。甲冑のような骨格にも見えるもの。巨大な襟巻に二本角を備えるもの。

並みの家屋以上の巨体でのっそりと進むそいつらは、恐竜。大森林独自の強力な魔獣たちだった。闇の種族はこいつらを飼いならしているのである。

鎖に繋がれ、大小鬼ホブゴブリン小鬼ゴブリンの恐竜使いたちに操られた彼らはゆっくりと、行軍に付き従っていた。

そして、彼ら以外の雑多な闇の怪物ども。

これら、闇の軍勢がおおよそ三千。

この軍勢を統率する首脳部は闇妖精ダークエルフたちである。甲冑を身に着け、邪悪なる魔法の武器を帯び、尖った耳と黒い肌を持つ美しい彼らは、優れた武芸と強力な魔法を身に着け、軍勢の各所で怪物どもを統率していた。

その中枢にいるのは高司祭。軍勢で最も位階の高い、邪神の神官である。

軍勢の中央をゆっくりと進む、四本脚の恐竜。そいつの背に設けられた輿にて軍勢を睥睨する彼の傍らには、漆黒の甲冑を身に着けた首のない女の姿があった。

槍で武装し、強力な魔法の鎧を身に着けた彼女は姫騎士。霊魂を徹底的に痛めつけられた彼女は、高司祭へと完全に従属していた。

姫騎士は、ただ、遥か先を見ていた。

暗雲に包まれた未来を。

決戦まであとわずか。

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