珍しく敵の情報が事前にかなりある(情報収集判定に成功)
「
村長の家。
そこに集まっているのは十名ほどの男たちと、そして服を身に着け、床に生首を置いた姫騎士である。
作戦会議だった。
「奴らは魔法を使う。吹雪を呼び出したり、傷を治したりするんだ。足を狙っても無駄だ。試みたことがあるが、足を傷つけて転倒させても癒されると思った方がいい」
「……ぁ………」
「ああ。それに、連中の頭蓋骨は分厚い。頭に投槍を当てても弾かれる。怒らせるだけだ」
姫騎士は、薬師が治療している魔法使いが造った従者である、と事前に説明されている。その行儀のよさに、村の猟師たちは恐れおののきながらもなんとか納得し、存在を受け容れていた。敵が魔法を使う以上、対抗するにはこちらも魔法が必要だ。
ただ、姫騎士は顔だけ見ればなまじ美人なので扱いかねていたというのはあるかもしれぬ。
猟師たちの姿は様々である。軽装の者もいるが、何名かは恐竜の皮や骨で作られた全身鎧を身に着けており、それらは羽毛や精緻な掘り込みを成された角などで装飾されている。その外観は大変に美しい。
彼らが身に着けているのは基本的に、自らで狩った魔獣らしい。すなわち鎧を見れば猟師の実力が分かるのである。明快であった。
「あんたには期待してるぞ」
「……ぉ……」
猟師の言葉に、姫騎士は視線で答えた。
◇
日が落ちた直後。
森の奥で、動き出した者たちの姿があった。
ねぐらから出てきたのは
目を覚ました彼らが最初に目指すのは水場である。
大森林の中でも山々に近いこの場所にはいくつかの湖があり、そのひとつを目指しているのだった。
毛むくじゃらの巨体が進むたび、地面が大きく揺れるような錯覚にとらわれる。実際には彼らは、慎重に歩いているのだが。体重で地面が沈み込みかねぬからだった。
先導するのは年配らしい個体。続いて何体もの巨人が後に続く。彼らは何も身に着けてはおらぬが、手には巨大な棍棒を持っていた。倒木のなれの果てであろうか。
もちろんそんなもので殴り飛ばされれば、無事で済むものなどこの世にはいない。
やがて森を抜け、草に覆われた場所へと到達する霜巨人たち。
彼らからすればほんのわずかな距離を隔て、湖が広がっていた。
◇
水場へとたどり着いた巨人たちは跪くと、口を水面へと近づけた。
澄んだ水である。冷たいそれはさぞやうまかろう。
霜巨人の一体も、棍棒を置いて思う存分水を飲んだ。
やがて満足したか。顔を上げ、手で顔をぬぐう。
続いて、
開かれた大口。
そこへ、巨大な切っ先が突き込まれた。
そう。潜んでいた者が構えていた長槍。それが水中から伸ばされ、霜巨人の急所。脳を一撃で貫通したのだった。
何が起きたか、誰にも理解できなかったに違いあるまい。
引き抜かれる槍。
どう。と地響きを上げ、
それを見て慌てた他の巨人どもが集まってきたときには、槍とその持ち主の姿は消えていた。
◇
血の気のない彼女が手にしているのは、骨と牙で出来た巨大な長槍。革の包みを背負った他は一糸まとわぬ彼女は、首の断面を晒していた。
姫騎士である。
偽りの生命しか持たぬ彼女は呼吸の必要がない。
とはいえ敵は魔法使いの集団である。集中砲火されてはかなわぬから、無理はしなかったが。
これは手始めであった。
対岸の様子を一瞥すると、彼女はその場を立ち去った。
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