ここしばらく寝不足です(文章力が低下している気)

―――動きづらい。

野伏は、両腕を広げた。続いて首をくるりと回す。

彼女は軽くと、周囲を一周した。体の調子を確かめると、にいる仲間目がけて降下する。女楽士が差し出した手のひらへ向けて降りたのである。

無事にした野伏は、不満の声を上げた。微妙に調子が外れた鳴き声を。

「ホォ」

野伏の霊魂を宿す肉体。それは、フクロウの姿をしていた。


  ◇


目覚めた後。

野伏は泣き出した。いかに楽天的とはいえ限度というものがある。まだ死にたくない。

それをなだめながら、女楽士は必死で説明した。野伏はまだ死んでいない。仮死状態になっているだけだと。

野伏の胸に突き立てられていた骨の短剣は、刺された者を仮死状態にする魔法の品だった。負傷の進行を停止させられるのである。それで時間を稼いだ彼女は野伏の霊魂を肉体からたのだ。

肉体は助かるらしい。女楽士の荷物には様々な魔法の品があった。角笛は酒杯として用いると毒消しの魔力を発揮したし、骨の縫い針は縫った傷を塞ぐ力を備えているのだ。

とはいえそれはあくまでも応急処置である。

仮初の死を与えられた野伏の肉体は、魔法を付与された上で埋められた。大地の精気を吸い取り傷を癒すために。死者に安らぎを与える埋葬の魔法を生者にかけたのである。

だから、可能な限り体を死体に近づける必要があった。

かくして肉体から引っこ抜かれた野伏の霊魂は、女楽士の使い魔の中に封じられたのである。死人ではない野伏の傷を癒すにはそれなりの期間がかかるとか。

する場所は安全に特段の配慮がなされた。地脈の優れた場所を探し、多重の魔法で陣が張られ、骨の獣たちのほとんどすべてが防備についたのだ。

とはいえ安心はできぬ。気付かれることなく男を連れ去った敵の正体が不明であるし、何より気がかりなのは歩哨の額に張られていた札。

死霊魔術ネクロマンシー。それも、女楽士の一門の魔法が使われていた。

この段階で、女楽士は確信していた。以前の亡霊スペクター騒ぎで破壊した土笛の術者と同一人物だと。

その人物は、闇の種族に与しているのだと。

野伏への処置を終えた女楽士は、荷物をまとめると追跡を開始した。

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