くっころのbossはなんとなくでできてます(あとつじつま合わせ)
それは武人の最高峰である。彼らは乗騎たる竜よりも強い。
彼らが跨るのは真なる竜である。
卵。あるいは孵ったばかりの幼竜を探索で発見するのがまず冒険である。この段階で挫折する者の方が圧倒的に多い。
だが。見つけ出してからが、最大の試練となる。
幼竜と言えども竜である。彼らは火を吐き、爪は鋼鉄をも切り裂き、あらゆるものを喰らうほどに獰猛だった。岩すら喰って滋養とするのだ。これを殺さずに屈服させねばならぬ。
その偉業を成し遂げたものだけが、
◇
上空より敵影を見下ろす客人は、よい位置を占めることができて満足していた。
その身を守るのは革をオイルで煮固めた鎧。金属鎧は残念ながら、彼の乗騎の年齢ではまだ身に着けられぬ。可能な限り軽量化する必要があるからだった。
乗騎と彼の肉体はしっかりと結び付けられている。空を自在に駆けるためには必要だった。
武装は乗騎にくくり付けられた長大な
標的を見定める。
戦斧を携えた、首のない女のように見えた。矢弾が効かぬと聞いた。恐らく強力な
矢筒より矢を抜き取る。矢じりは銀。弓につがえる。空中より地上の敵を射るのは大変難しく、ちょっとしたコツが必要とされた。
故に、今から行うべきなのは騎射。
彼は乗騎に指示すると、しっかり両足で体を固定した。
◇
太陽から、竜が落ちてくる。
女勇者は四つの目で敵を凝視した。
翼を閉じ、急降下した竜。位置エネルギーを運動エネルギーへと変換したのだ。彼らは地表すれすれで翼を開くと、恐るべき速度でこちらへと迫ってくる。いや、戦斧が届かぬギリギリの高度を抜けるつもりだ!!
女勇者の真上を、背面飛行ですれ違う瞬間。
敵の意図を悟った女勇者は、戦斧を振り上げた。攻撃のためではない。身を守るために。
それは、同時に放たれた二矢。その一矢を弾き、もう一矢も、肩口を掠めるにとどめた。初撃の防御に成功したのである。
たちまちのうちに遠ざかっていく敵手。恐るべき技量だった。
―――強い。
女勇者は警戒を強めた。第二撃が来る。
◇
―――二矢とも防がれるとは!
客人は敵の技量に驚嘆していた。死してなお蠢く怪物とはとても思えぬ。人型が最も苦手としている頭上からの攻撃だというのに。
生前は、さぞや名のある武人だったのであろう。
そして、あの一瞬で見た生首。美しい女人であった。ふわりと波打った黒髪。穏やかな顔立ち。瞳に宿るのは、強い意志。
出会ったのが、人里離れた山奥ででもあったのならば。ひょっとすれば、言葉を交わしていたかもしれぬ。あるいは、今からであっても逃げ去るのであれば追いはすまい。
だが彼女は立ち続けている。何らかの目的があって、あの場所にいるのだ。
ならば排除するしかあるまい。ここは人々の住まう街の前だったから。
◇
女勇者は、戦斧を振るった。大地へと横一線に一撃し、巨大なる溝を作り出したのである。
空中を旋回し、再び急降下してきた敵影。その胸郭が大きく膨らんだことを、彼女は見て取ったから。
竜が眼前に迫るのと、女勇者が溝へと飛び込むのは同時。
直後。
大地を、地獄の業火が襲った。
◇
「―――なんという手練れ」
客人が二度目の攻撃に選んだのは
にもかかわらず、敵はこれをかわして見せた。即席の堀に身を投じることで防御してのけたのである。その剛力で地形すら変え、咄嗟に避難所を創り上げるとは。
恐るべき判断力。
吐息それ自体は魔力を内包しているが、それによって溶融した大地が備えるのは自然な熱量である。地表に戻った彼女は、溶けた地表を素足で踏みしめていた。熱によって生じた気流が純白の衣を揺らす。
戦斧を携え、脇に首を抱えた彼女。その姿は、陽炎によって揺らめき、信じがたいほど美しい。
客人は、敵手に敬意を持った。あれほどの武人と戦えるとは!
もはや相手の生死などさしたる問題ではなかった。己も死力を尽くさねばなるまい。
◇
上空で旋回する
すなわち、次に来るのは急降下からの攻撃。
そこまでを予測した女勇者は、三度、戦斧を構えた。次は一体どのような攻撃が来るというのか。
敵の翼が閉じ、加速する。地表すれすれで翼を開き、こちらへ突っ込んで来る
竜自身の頭部よりもなお、前へ伸びているそれが、女勇者の戦斧と激突した。
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