そういえばこれくっころで二人目の職業:騎士ではないか(いや首なし騎士という観点で行くといっぱいいるけども)
―――立派になったものだ。
女勇者は、故郷であるはずの城塞都市の前に立ち、城門を守る兵たちとにらみ合いを続けていた。既に相当数の矢弾を浴びせかけられた後の事である。陽光が降り注ぐ、昼日中。斧を足元に突き立て、衣を纏い、左の小脇には生首を抱えている。
思案の上でのことだった。
故郷が昔の小さな村のままであれば、忍び込んで友人や家族に会う事も出来ただろう。だが、この規模の都市に忍び込み、変わってしまった構造の中で知己を探すのは不可能に近い。
ならば、真正面から堂々と訪れるべきだと思ったのだ。
魔法の武器しか通用しない強力な
それに、そんな状況ならば魔法使いも出てくるに違いない。これだけの都市である。仮に定住している者がいなかったとしても、何らかの事情で訪れている者もいるだろう。女勇者は声を出せぬが、魔法使いであれば言葉が通じるはずだと睨んだのだった。
唯一の問題点は、彼らと一戦交えたあと、無事に逃げ延びられるかどうかということだけ。だが、女勇者はその点については楽観視していた。太陽神の神官最大の武器である陽光の召喚は自分には効かぬ。気分が悪くなるだけだった。まぁ今は昼間だから、これ以上悪くなることはあるまい。
それにしても、今日はいい天気だった。快晴と言ってもよい。曇っている日を選ぶべきだったかもしれない。
そんな事を思いつつ、女勇者は待った。
◇
「馬鹿な……あの方は……」
城壁の上より件の
そう。つい先ほど、客人との雑談で話題に出した神官。彼女はそれと同じ顔を持っていた。
だが、そんなはずはない。彼女は五十年近く前に死んだ。それが、今更さまよい出てくるなど。
彼女は口を開き、何かを叫ぼうとしているようだが、残念ながら声は聞こえない。出せないのかもしれない。
神官とは知識階級である。だから、それなりの規模の神殿で長い間研鑽を積んできた老神官も、あの
対応に苦慮する老神官。そんな彼は、高らかに響き渡る音色を耳にした。空から吹き鳴らされている、勇壮な角笛の音を。
天を見上げた彼の視線の先。
そこを飛翔するのは、人が跨った強大なる魔獣。
―――竜。
「いかん!」
戦う気なのだ。客人は!!
されど。
止める手段は、ない。
◇
角笛の音色は、女勇者の耳にも入っていた。出所を探り、そして上空。こちらから見て太陽が背になる位置を占位した、巨大な生物の姿を確認する。
竜。
全身が細長く、鱗に覆われ、皮膜を備えた翼を持ち、頭部からは角が生え、鋭い牙が生えそろい、四肢には鋭い爪が伸び、長い尻尾を備えた、強力無比な怪物である。
―――
先の角笛は、味方に対して自分の存在を知らせるものであろう。奇襲を受けずに幸いしたというところか。騎士は正々堂々としたものだが、それは人間相手の場合に限られる。闇の種族や不浄なる怪物相手に戦う時、正々堂々という概念は存在しない。
女勇者は苦笑。
―――それにしても、故郷の者は気が短くなったものだ。
敵に向き直る。高位の竜は存在そのものが魔法である。死者を殺せるはずだ。それに、
いずれにせよ、単騎で一軍に匹敵する
―――よかろう。死んでも恨むなよ。
左腕でしっかりと首を抱え直す。防御を考えるなら柄に生首をかじりつかせることはできなかった。戦斧の巨大さを盾とせねば。
そして、一騎打ちが始まった。
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