本当の無双というものを見せてやろうzzz(それは夢想)

天からの光。降り注ぐ星光を浴び、背の翼で空高く舞い上がった女神官は―――女神官は、周囲を見下ろした。

いけない。随分と長い間眠っていたようだ。からだが窮屈すぎた。魔法わたしにとっては中々厳しい環境だ。星神あるじどのめ。よくもこんな狭い場所に押し込めおって。係はつらい。

しかし寝ぼけていたとはいえ、自分は一体全体なんで、自らの力を星神あるじどのの力と勘違いしていたのであろう。不思議である。水神の声が聞こえない?魔法わたしは仮にも神籍の末に名を連ねる者である。全ての神の声を聴くことができるが、自分の内なるこだまを神の声と勘違いしているようでは、それはことなどできようはずもあるまい。

さて。前方に転がっているのは友人か。世の理に反する存在とはいえ救わねば寝覚めが悪い。いや、自分は寝起きだが。

とりあえず素手まほうで敵勢を殴りつぶす。ぷちっと。うむ。こちらの方がやはり簡単だ。生身の体は扱いが難しい。存在そのものが魔法である私たちにとっては、手足を振るうより魔法を行使する方が楽なのである。よくもまあ己は、戦棍を振り回して逞しく戦えていたものだ。

おっと。少年の傷も癒しておかねば。仮にも私の従者である。私を守ろうとして傷ついたのだから、救うのは主として当然であろう。死んでしまったら面倒だ。生き返らせたりすれば冥府の役人から小言を言われてしまう。ちょちょいと治す。ついでだ。幼児の頃についた古傷に至るまで消してやろう。

さてと。

敵の本隊が残っている。闇の軍勢。我らの敵が。いまだ千近く残る闇の種族と、そしてその中央。小山のような腐肉の塊。瘴気が臭くてかなわぬ。

あちらも素手まほうで皆殺しとしてもよいが、それでは趣がないし、何より野蛮である。仮にもであるならば、やはり道具を使うべきであろう。

星界へとを伸ばし、適当なを物色する。―――あった。これが手ごろか。

掴んだ石礫の大きさは、大きめの館程度。

星界に浮かぶそれを、狙いを定め、そして投下する。

尾を引いて堕ちてくる石礫は、大気に削り取られ、随分と小さくなりながらも、南の空から斜めに落下。衝撃波で敵勢の前衛を薙ぎ払いながら中央を突き抜け、そして腐肉の塊―――骸竜ドラゴンゾンビィに直撃した。

いともたやすく粉砕される闇の怪物。あ、しまった。腐肉が飛び散ってしまったではないか。臭い。まあよいか。それを差し引いても愉快である。

ふははははは!お前たちの切り札は、魔法わたしの礫で砕け散ったぞ。貴様らは魔法わたしにとって、道端の石ころで皆殺しにできる程度の存在なのだ。

逃げ惑う敵勢を見ながら思う。

さて。次はどうしてくれようか。地道に一匹一匹へ石礫を投げるのも面倒だ。あまり大きいのを投げつけると、あたり一帯が吹き飛んでしまう。違う道具が欲しい。かといって大地を引きはがせば地母神の領域を侵すことになる。面倒は避けたい。

そうだ。いいことを思いついた。天より降り注ぐ光を歪める。星光を集め、死の光線デスレイを作るのだ。奴らはこんがりと焼けるであろう。

出来上がった星光の束は、死の光線デスレイというよりは剣だった。

縦横無尽にそれを振るい、焼き払い、切り殺す。

やがて、敵勢の大半が消滅。

うむ。存分に楽しんだ。今日は魔法わたしにとって良き日となるであろう。

そう。魔法わたしにとっては。

―――わたし?

私は、一体、何を……

そうして、は、意識を喪失。天空より落下していった。

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