にゃっはー!!(全部はっちゃけた)

―――こんにちは。あなたは、私の中へ入って来た二人目の客だ。

女騎士が我に返った時、そこは、中州の環状列石ストーンヘンジ内ではなかった。

そこは虚空。星々が瞬く他は何もない、絶対の虚無の世界であった。

………星界?

―――いや。違う。ここはあなた方の概念における"星界"ではない。あなた方の世界の外側、隣り合った場所に存在する別の世界の記録だ。

女騎士の疑問に投げかけられる声。重厚だがどこか温かみのある、そしていたずらっぽい声。見回しても、その主は見当たらない。

―――それはそうだ。あなたは今、私の中にいるんだから。

………中?ということは、あなたは神器―――その欠片なの?

疑問に、"声"は苦笑。

―――神器、とはあなた方がそう呼んでいるだけに過ぎない。私は、私を作った者達にとってはただの武器だ。幾らでも作る事のできる、替えの利く道具。

………道具……

―――私は、持ち主である"輪廻"の魂の写し。いや、この言い方だと誤解を招くな。私自身が"輪廻"の一部なんだ。君たちが鋼の戦神マシンヘッドと呼ぶ種族は、手にしている武器まで含めてがひとつの生命なんだ。そして、私たちは体の隅々まで使って思考している。

………じゃあ、あなたは神様なの……?

―――否定する。私は神じゃない。君たちが神獣と呼ぶあいつも、神なんかじゃない。ただの、君たちよりはちょいとばかり頭の回転が速くて強力な生命体に過ぎない。

………あれで、ちょっとだなんて……

―――うちの親父殿たち。私たちを作った存在も、君たちとさほど変わらない力と知性しか持っていない。違うのは先人の積み重ねて来た知識の量だけだよ。

………知識……?

―――その通り。私たちも本質的には君たちが作る土人形ゴゥレム死にぞこないアンデッドと変わらない。テクノロジーの産物だ。まあ君たちの言うところの"魔法"は私にとっては大変に興味深い存在だがね。

………なぜ、私たちを撃ったの?

―――これは大変申し訳なく思っているんだが、私はつい先ほどまで半分寝ていた状態でね。君たちが神器と呼ぶあれ―――対艦攻撃用銃剣と繋がって、情報を整理して、ようやく事態を把握したんだ。君たちを滅ぼす手伝いをする気なんてこれっぽっちもなかった。償いをしたい。

………償い―――神獣を、止められるの?

―――止める、というか、元々の予定通りにするのさ。私に与えられた命令は、あいつが太陽を破壊し終えたら自爆して殺せ、だった。それをちょいと早める。あいつが星界に飛び立ち、太陽にたどりつく前に私が自爆しよう。あいつが死ぬギリギリの威力でね。私の計算では恐らく君たちの世界に致命的な影響は出ないと思うんだが、こればっかりは未知の異世界だから断言はできない。無責任で申し訳ない。

………そんなことはない。ありがとう。

―――どういたしまして。しかし、君たちが太陽と呼ぶあれ。私の感覚だと天体と呼びたくないんだよ。なんで恒星があんなふざけた形態をしているのやら。いやはや、まさしく大自然の驚異としか言いようがないな。まああの"禍の角"、いや神獣も、さすがに我々の世界の恒星なら吹っ飛ばせないんだけどね。あ、申し訳ない、君は太陽を信仰しているのか。

………そんなことまで分かるの?

―――分かる、というか、君たちが大賢者と呼ぶあの男は散々私を調べていたからね。こっちも寝てる間にこの世界の生命体の構造については調べ尽くした。だから君の記憶は全部読み取れる。今君と会話できているのもそのためだ。

………生命体。私は、死んでいるのに。

―――非常にユニークな形態であるのは認めるが、私の感覚だと君は生命体だな。少なくとも、私と人の類よりは、人の類と君の方が近しい。ああ、悔しいな!この世界の情報を本体に持って帰れないだなんて。勿体ない。うちの妹あたりに聞かせたら絶対食いついてくるよ。世界だなんて!!

………妹さん。家族がいるだなんて。

―――まあ姉妹機だがね。大切な妹だ。ああそうそう。一つお願いがある。

………?

―――神獣が飛び立った後もここに私の欠片は残ってしまうんだが、それの管理を頼みたい。この世界で分散思考型転換装甲を作れるようになるには後二千年ばかしかかるとは思うんだけど、それまでの間、今回みたいに私を悪用しようという馬鹿が出てきたら困るからね。この世界のテクノロジーじゃ、私を破壊できないだろうし。君は永遠に生きるつもりなんだろう?ちょうどいい。

………わかった。じゃあ、二千年後にまた。会いましょう。

―――ありがとう。じゃあ後はよろしく。奴が飛び立ったら、私はまた眠りに就く。


そして、女騎士は、現世へと舞い戻った。

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