547神猫 ミーちゃん、あれ~~~~。

 サンドイッチを食べていると、ペロやルーさんたちも参加するようでギルド前でバッタリと会った。



「ネロ。にゃんか死んでるにゃ?」


「徹夜明けでね。眠い」


「ペロは快眠! 元気いっぱい、ご飯が旨いにゃ! サンドイッチ頂戴にゃ!」


「にゃ!」


「「にゃんこ先生はいつも元気はつらつ! オロニャミンC!」」



 それ、俺以外誰もわからないネタだぞ。宗方姉弟。


 サンドイッチは二口くらい口を付けただけで、ペロとセラに奪われた。俺の朝飯が……。


 ハンターさんの準備が整い、王宮から一斉に兵が貴族街になだれ込む。捕まえられた貴族は王宮の練兵場に集められる。


 俺は捕縛の終わった貴族の屋敷に役人と一緒に入り、証拠の押収作業を手伝う。屋敷の使用人も一時的に捕えているので屋敷には監視の兵士が数名いるだけ。


 正直、一緒に押収作業をしている役人は手慣れた様子がない。素人だな。目に見える金庫など机や棚ばかり調べている。


 この後もまだ何件もあるのに、これでは埒が明かない。仕方ないので、マップスキルに見える隠し部屋や隠し金庫を、グラムさんにに開けてもらう。


 ある意味、開錠のネックレスとためを張る性能だ。


 役人の方々はポカーンと開いた口が塞がらない。



「はいはい、時間は有限。さっさと王宮にここにあるものを運ぶ手配をしてください」


「「「は、はい」」」



 兵士と荷馬車が呼ばれ運び出される。


 しかし、貴族の隠し場所は巧妙だ。隠し金庫や隠し部屋はよく見るが、使用人の部屋に隠し金庫があったのには驚いた。


 こうなると使用人も同罪だ。知らなかったでは済むわけがない。


 こうして、一軒一軒マップスキルを使い俺が指示して押収していく。結局こうなる。己のことながら、面倒くさい。


 捕縛と押収作業が終ったのは陽が落ちる手前。今日も徹夜かなぁ……。


 ハンターギルドに一度戻り、ミーちゃんに今日も王宮で泊りになると伝えると、



「みぃ……」


「じゃあ、一緒にに来る?」


「み~」



 ペロに今日はミーちゃんを連れて行くと伝えて、テラに挨拶してから王宮に移動。


 昨夜より大きな会議室が用意されていて、役人も昨日の倍いる。


 以前捕まえた監視組の五人をミーちゃんバッグから出してやると本人も驚いていたが、周りの役人も驚いていた。


 魔界に送るのを止めたんだから協力しろと、再度脅すと首を縦にブンブン振る。


 なぜか、周りの役人の方々からドン引きされている。この人たちも魔界のこと信じているのだろうか?


 作業を始めようとした時、どこから聞きつけたかニーアさんがやって来て、ミーちゃんを奪取しいなくなる……。



「みっ!? み~~~」



 カムバァ~ック~、ミーちゃん! 俺の癒しが消えたね。今日も長い夜になりそうだ……。


 まずは大物貴族から押収物から確認、役人の方とチームを組んで確認を始める。俺たちのチーム以外にも四つのチームが動き出した。


 裏帳簿の支出と闇ギルドの資料を照らし合わせ裏を取る。金の動きが連動しているのでほぼ間違いないだろう。


 それにしてもこの裏帳簿酷いな。脱税の額が半端ない。貴族が裕福なのがよくわかる。悪事の限りを尽くしているって感じだ。


 闇金融並みの高利貸しからその借金のかたに身売りさせた資料まである。闇ギルドだけでなく商会とも深い繋がりがあるのがよくわかる資料。


 商会をリストアップしていくと、フォルテで俺に喧嘩を売ってきた商会の名もちらほら確認できる。


 この資料に出てくる商人たちにも後日メスが入ることになった。悪事に加担していた資料は揃っている。報いは必ず受けさせる。


 しかし、ここにいる役人の多くは下級貴族の子弟。この状況をどう見ているのだろうか? こんなのを見せられたら虚しくなるか、馬鹿らしくなってくると思うな。


 整合性の取れた書類から次の作業のチームに回す。その書類を元に法律に則って公訴事実をまとめて起訴状作り。


 伯爵位の貴族は王様が直に罪状認否を行なうことになっている。それ以外は簡略的に役人が罪状認否を行なうが、罪状がひっくり返ることはほとんどないらしい。


 一応、法治国家だが王政人治国家でもある。


 朝までかかりすべてを終わらせる。正直、男爵以下については後日ゆっくりと審議。


 今日中に判決を言い渡すのは子爵以上と領地持ち貴族。さっさと財産を押える算段らしい。


 眠い目をこすり、謁見場に移動して脇に並ぶ。


 陛下が御出座される合図がされ膝を付き畏まる。



「全員、表を上げよ。これよりブロッケン辺境伯を害さんと、暗殺を企てた愚か者どもの裁きを行なう」



 最初に引っ立てられて来たのは領地を持たない伯爵。国王派で宰相派の貴族だ。こいつはロタリンギアと繋がっていて、王都でのまとめ役。


 王様も宰相様もまさか自分たちの派閥の中枢に獅子身中の虫がいたとはショックを隠せないでいたそうだ。


 兵士に跪かされ役人が起訴状を読み上げる。



「ナッサウ伯よ。我が父の代から忠臣であったそなたが、なぜ?」


「ハッハッハッ……なぜ? 先王も愚かであったが、輪をかけて愚か者よ。この国を支えてきたは誰ぞ! それは我々貴族だ! 無知な民を導きこの国を大国へと押し上げたのは、選ばれし高貴なる血を持つ我々貴族だ! それすらわからぬ愚か者ゆえ、どこの馬の骨ともわからぬ者を貴族などにするのだ!」



 選民思想、まっしぐら。救いようがない。



「高貴な血ってのは真っ黒で蛆が湧いてんじゃね?」


「き、貴様! 下賤な身のほどをわきまえず愚弄するか!」


「その下賤な身である俺に、高貴なる貴族人生に幕を降ろされる気分はどうだ? 愚かな貴族様」



 おうおう、凄い目つきで睨んできてるよ。痛くも痒くもないけどね。



「ネロ、黙れ」



 王様からも睨まれた……。







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