546神猫 ミーちゃん、迷探偵は出番なしです。


「君に関わると碌なことがない」


「まあまあ、そう言わずに。貴族を減らせる絶好の機会じゃないですか」


「私の派閥からも出ているのだがね」


「それだけ馬鹿が多いってことですよ」



 どこの派閥関係なく満遍なく雁首を揃えている。正直、まったく接点がない貴族も多くいるようだ。妬み嫉みの類かな? だとしても、殺そうとまで思うなんて貴族の闇も相当に深いな。



「そういえば、執事さんや侍女さんの手配、ありがとうございました」



 宰相様に頼んでいた人材がフォルテに着いたのだ。グレンハルトさんは役所のほうが忙しく、屋敷のことまで手が回らないでいた。


 今は宰相様が寄こしてくれた執事さんが、フォルテの屋敷を仕切ってくれている。


 ニクセのリンガードさんにも必要か聞いたけど、必要ないと言われた。ニクセには領主屋敷や代官屋敷がないからだ。


 代官屋敷くらい作ろうかと言ったのだが、逆に気を使うのでいらないと拒否られた。主にリンガードさんの奥さんに。自分で家事全般をするのが好きらしい。


 在任期間が過ぎても残ってくれると言ってくれているので、好きにしていいと言ってある。


 ニクセの人材は優秀だから助かる。


 会議室に人が集められ、書類の精査が始まる。最初にしたのが書類から関係者の名前の拾い出し。どこまで関係しているのかも同時進行で調べる。


 まあ、出てくるは出てくるは。血判状に名を連ねた貴族以外にも資金援助や、ロタリンギアとの仲介に手を貸した者。書き出していくと思った以上に多い。


 宰相様と役人の顔色が悪い。まあ、俺には関係ないけどね。


 すべて書き出した時には夜中の二の鐘の時間を超えていた。


 そこから、監視役が吐いた情報との適合作業。書類と適合すればいいけど、書類にない人物の名もある。これは、この後捕らえた貴族の供述でわかってくるだろう。


 それが終わると、この事件に関係した貴族の家族構成と、今現在どこにいるのかの情報を集めてからの捕らえる者の選定。領地にいる者もいるので迅速に捕えないといけない。


 今、第一騎士団しか王都に残っていないので軍を派遣することはできない。役人を派遣して近隣の領主の私兵を借りるか、ハンターさんを雇って捕らえるかになる。


 大変な大捕物になる。上手くやらないと逃げられる恐れもある。だからこそのスピード勝負。


 夜が明けた頃にすべての書類が出来上がり、王様の決裁待ちになる。


 何度、ミーちゃんのミネラルウォーターのお世話になっただろうか……。宰相様が切実に欲しがる理由がわかった。


 書類作りが終わったから帰りたいのだけど、帰らせてもらえない。



「君の案件だ。最後まで責任を持ちたまえ」



 宰相様がギロリと睨んでくる。暗にお前だけ先に帰れると思うなよと言われているようなものだ。


 大捕物も手伝わされるらしい。帰って寝たい……。


 これもすべて馬鹿貴族共が悪いんだ! 許すまじ!


 そして、王様の決裁が行われ王命として、この件に関係した貴族の捕縛が始まる。


 早速、王都以外にいる捕縛対象の貴族を捕らえに、準備をしていた役人が馬を走らせる。


 王都内の貴族は王都の警備隊と第一騎士団が捕縛のメイン。


 俺が宰相様の依頼書を持ってハンターギルドに向かい、ハンターさんをサポート要員として雇う。


 準備が整い次第、捕縛が始まる。



「なんじゃ、こんな朝っぱらから?」


「目が死んでいるぞ。ネロくん」



 ミーちゃん成分が足りないので、今はテラを抱っこしてモフモフ成分を補充中。


 ゼストギルド長に宰相様からの手紙と依頼書を渡す。



「なるほどのう。今日もやるのか」


「さすがに貴族相手では、ハンターはサポートに回るしかないですからな」


「パミル君。準備を頼む」


「承知しました」



 テラの温かい体温で俺のお腹辺りがポカポカになっている。ヤバい眠気が襲てくる……。グラムさんは平然としている、俺が夜中働いている間、寝てたからな。



「準備ができたら起こしてください。寝ます。ああ、ついでにサンドイッチを用意してもらっていいですか? 出発する時に食べますので」


「はぁ……。マスターにお願いしとくわ」



 顔をペロペロと左右から舐められている。



「み~」


「みゅ~」



 ミーちゃんと、テラだね。おはよう。



「ネロくん、準備ができたぞ」


「どれくらい寝てましたか?」


「一の鐘ほどじゃな」



 一時間ほどの睡眠だけど、頭がすっきりした。


 さて、やりますか。


 ミーちゃんはテラとお留守番。貴族の隠し金庫が気になるけど、王宮の兵が主導だから勝手に拝借するわけにはいかない。


 なので、必要になるのは俺のマップスキルだけ、お手伝い程度。残念ながら迷探偵は必要ない。



「みぃ……」



 書類を一緒に作った役人の方が来ていて、主要な人たちを集めて手順の説明。十組に分かれて捕縛を行なう。


 ハンターさんの役目は北区の門と王都の門及び地下道の監視。最初に大物を捕縛するので、小物は後回しになる。捕縛に感づいた小物が逃亡を図ることが考えられる。


 今日は貴族は外出禁止だ。



「み~」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る