545神猫 ミーちゃん、魔界のプリンス、いいと思います。

 ゼルガドさんがステージを撤去している時にも、種や仕掛けを探して大勢の人が周りを取り囲み、あーでもないこーでもないと議論を交わしている。



「派手にやったのう」


「半信半疑だとしても、魔界に送り込んだという噂は広がるでしょうな」


「ブロッケン辺境伯は実は魔界のプリンスじゃと言っておった者もいたのう」


「いい二つ名が付いたじゃないか。ネロくん」


「み~!」



 ははは……魔界のプリンス。笑えねぇ。魔王となにが違うんだ?


 さて、まずはハンターさんの依頼の清算をしましょうかね。テラの所にミーちゃんを置いて、パミルさんに清算を頼む。



「一括でいいの?」


「いいですよ。闇ギルドのアジトで、たんまりとお金を手に入れましたから」


「ネロくんが極悪人の顔に……。魔界のプリンスの名は伊達じゃないわね」



 おいおい。盗賊から手に入れたものは、手に入れた者に所有権が移るんですよ? それに、王妃様から自由にしていいとも許可をもらっていますからね。


 元々の依頼料に色を付けて清算してもお金は余っている。


 こんな泡銭はパァーと使ってしまうが吉。



「本当にいいのかよ? ネロ」


「構いません。パァーと使ってください。アジトで見つけたお酒も置いていきます」



 ルーさんにお金の入った袋を渡す。結構な大金だ。ルーさんが片手で持てないくらいだ。



「ペロたちもいいのかにゃ?」


「にゃ?」


「いいよ。じゃあ、夕飯はいらないね」


「にゃにを言ってるにゃ! 夕飯は別腹にゃ!」


「にゃ!」



 夕飯が別腹かい! 腹ペコ魔人、恐るべし。



「僕たちもいいですか?」


「飲み会だ~」


「ついでに、ゼルガドさんも誘ってね。俺はグラムさんと荷馬車で帰るから」


「「らじゃぁー!」」



 ペロには神猫屋に行ってポテトや唐揚げを大量注文させる。忙しくなるだろうけど、売り上げうアップに繋がる、滅多にない好機だ!



「ペロ、ミーちゃんをよろしくね」


「姫は任せるにゃ!」



 俺はこれから家に戻り、王宮に向かわなければならない。アジトで見つけた書類の確認だ。おそらく、徹夜になるだろうから。



「魔界のプリンスネロくん。ようこそ」



 侍女さんたちからププッと失笑が漏れている。笑いたきゃ、笑え! 


 それにしても、情報が早い。なにか情報をやり取りできる手段でも持っているのかな? まあ、あれだけのことをやって気づかないほうがおかしいか。今回はそれが狙いでやったのだからな。



「面白いことをやったわね。どんな仕掛けだったの?」



 ニーアさんの後ろに転移する。



「転移の応用です」



 俺の声で、ニーアさんが驚いてこちらを振り向く。



「ネロくん、転移スキルなんて持っていたかしら?」



 ニーアさんが王妃様に首を振っている。まあ、時空間スキルは烈王さんクラスの鑑定持ちじゃないと見えないからね。まあ、本当のことは言わないけどね。



「ハンターギルド本部での戦利品ですよ。条件付きですが一応AFです」


「戦利品……。あの剣以外にも持ってきてたのね……」



 誰も剣だけとは言っていない。



「どこかに飛ばしたわけね。いいAFね。譲ってくれない?」



 そんな可愛らしく上目遣いで見てもあげません。



「とても使い勝手のいいAFです。戦闘力の低い俺には切り札になります。それに使うには条件があるので俺以外には使えません」


「ネロくんはどうして使えるのかしら?」


「魔界のプリンスですから」


「プ、プッ! ちゅうにぃ……」



 なぜか、ディアナちゃんが噴き出しているけど、笑いを堪えている感じだ。今回の件の意味がわかっているのかな?


 レーネ様やラーレちゃん、カミル君は意味がわからずポカンとしてるのに。



「さ、さすが、魔界のプリンスね。しょうがないわ。諦めます」


「そんなことより、大事なのはこれです!」



 ニーアさんにアジトで見つけた書類を渡す。ざっと目を通しただけだが、監視役が白状した内容とおおよそ合っている。


 違う部分は貴族の数が吐いた内容より多いことだ。まあ、これだけの数だと覚えきれなかったのだろう。あまり気にしはしない、増えることに関しては困らない。粛清対象が増えるだけだ。


 王妃様がその書類を見て、



「アーデルベルトを呼びなさい」



 ああ、宰相様、また眠れぬ日が続きますよ。



「お呼びですかな」


「ネロくんが証拠を手に入れてきました。すぐに対処しなさい」



 宰相様が眼鏡をずらしギロリと俺を見てくる。だから、怖ぇーよ!



「はぁ……加担した者たちへの沙汰は如何しますか?」


「伯爵家は成人以上は死罪。財産没収のうえ取り潰し。子爵以下は財産没収のうえ取り潰し。成人以上は罪人兵としてはゴブリンキング戦に参加。討伐後、生きていれば恩赦を与えます」


「本気ですかな?」



 相当な数の貴族の名があるから、宰相様も確認を取ったのだろう。伯爵家だけで三家ある。



「辺境伯の暗殺を企んだのよ。当然ね」


「ですが。この暗殺計画は辺境伯になる前に立案されたものと思われますが?」


「取り消してない以上、同じことよ」



 憐れ馬鹿貴族どもよ。王様は手を叩いて喜んでいることだろう。これだけの貴族が減れば、財産も没収だから直轄地も増える。財政も少しは楽になる。馬鹿な代官が赴任しなければの話だが。



「承知しました。ところで当事者である辺境伯にはお手伝いしていただけるのでしょうな?」



 宰相様が眼鏡をずらしギロリと俺を睨む。逃げんじゃねぇぞ! ってことだろう。だから、怖ぇーよ!



「私のことですからね。お手伝いはさせていただきますよ。もちろん、差し入れ付きで」


「ふむ。喜ばしい申し出ですな」


「じゃあ、二人ともよろしくね。明日の昼までにはユリウス様に報告書をあげてね」



 王妃様がとてもいい笑顔で、時間制限付きでの断頭台への階段を登るよう促してくる……。くっ、ミスった。



「「……承知しました」」



 断れるわけがねぇーよ!



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