542神猫 ミーちゃん、大捕り物開始で~す。

 さて、戻りますよ。


 戻ってからが間違いなく大仕事だ。


 ルーさんたちには馬を連れて帰ってもらい、ハンターギルドに緊急依頼を出してもらう。


 闇ギルドへの報復だ。


 その前に俺は王宮に行って、王妃様に報告だな。闇ギルドを襲う許可ももらわないといけない。今回の主要貴族は国で捕らえることになるかも。口惜しいがしょうがない。そこは王妃様と交渉だな。



「このおっちゃんはどうするにゃ?」


「どうもしないよ。好きにすればいい。彼はある意味、闇ギルドから解放され自由になったんだ。今までの行いを悔い改め、仲間たちの弔うもよし、お門違いだけど俺への復讐をするもよし、彼次第だよ」


「ネロは甘いぜ、遺恨は断つに限るぞ」



 ルーさんの言うこともごもっとも。だけど、俺はこの人に賭けてみたい。闇ギルドの者とはいえ、これだけの人数を率いて、仲間思いなところもある。場所が違えば一廉の人物になったかもしれない男だから。


 さあ、戻ろう。やることはいっぱいだ。



「み~」



 スキニーさんに御者を任せ、俺はグラムさんを連れ王宮に直行。



「そんな慌ててどうしたの?」



 ミーちゃん、ネコカップゴーレムと一緒にルカたちとご対面。ルカたちは砂で出来たネコカップゴーレムを見てビビってる。


 ミーちゃん、そんなネコカップゴーレムの上によじ登りドヤ顔。それを見て安心したのかルカたちも、ネコカップゴーレムに近寄っていく。


 いや~和みますな~、ずっと見ていても飽きないね。って! 違うから! 和んでいる場合じゃないから!



「町の外で闇ギルドに襲われました」


「「!?」」



 王妃様もニーアさんも驚きと困惑の表情。



「無事なようだけど怪我はなかったの?」


「あの程度の戦力で俺を襲うなんて、ちゃんちゃら可笑しいです。舐められたものですね」


「そ、そう。ちなみにどのくらいの人数に襲われたのかしら?」


「監視も合わせて六十五名ですね」


「「……」」



 王妃様もニーアさんも黙っちゃたね。


 下を見ればネコカップゴーレムに跨ったミーちゃんを先頭にねこねこ行進が始まっていた。最後尾はレーネ様たち三人が付いて行く。侍女さんたちが二手に分かれて手を繋いでトンネルを作ってくれている。楽しそうだね。



「まあ、襲われたのはいいとして、情報をすべて吐かせました」


「襲われたのはいいのね……」


「いろいろと楽しいことになりそうです。そこで、この落とし前はどう付ければいいかなと」



 ニーアさんに監視役五人が喋ったことを書いた手帳を渡す。ニーアさんがざっと目を通して天お仰いぎため息をこぼす。



「ニーア?」


「申し訳ございません。影の長、失格でございます」



 ニーアさんが渡した手帳を見た王妃様も唖然の表情。



「ネロくん、証拠は?」


「この後、闇ギルドのアジトを潰しに行きます。そうすれば証拠の一つでも出てくるでしょう」



 それに貴族なんて叩けばいくらでも埃が出てくる奴らだ。最悪、無ければでっち上げればいい。手帳に名を連ねた奴らは、今回の襲撃に間違いなく関わっているのだから。



「そ、そう。またハンターギルドを動かすのかしら?」


「ペロたちがすでに向かって準備しています」


「さ、さすが、ネロくんね……。この手帳は借りていてもいいかしら? それと、監視役五人を引き渡してほしいのだけど?」


「構いません。あとで証拠と一緒にお渡しします。それから、闇ギルドは自由にしていいですね?」


「も、もちろん。好きにしていいわよ」



 その時の俺の表情は、王妃様とニーアさんの背筋が凍りつくほどの悪い顔をしていたそうだ。


 さて、言質は取った。ミーちゃん帰るよ!



「み~」



 ハンターギルドに着くと、既に大勢のハンターさんが集まっていた。


 俺とグラムさんは馬車から降りてスキニーさんには馬車で家に帰ってもらう。



「私がいない間に楽しいことをするとミストレティシアが拗ねていたぞ。少年」


 しょうがないと思います。こっちだっていつ襲われるなんかなんて知りません。



「ミストレティシアが手助けは必要かと聞いてきているがどうする? 少年」


「必要ありません。さすがに頭にきたので徹底的に見せしめにします。うちに手を出した以上、抹殺します!」


「み~」



 頭の悪い闇ギルドに少しばかり恐怖を植え付けてやろう。


 ギルドの建物に入るとみんな大わらわ。誰のせいだ? 俺だな。



「ネロくん! こっちに来なさい!」


「みぃ……」



 パミルさんの後ろにオーガーが見える。そばに寄りたくないのですけど。


 逃げようとしたけど、ママにゃんに首根っこを咥えられたにゃんこのようにギルド長室に連れてこられた。



「ネロくんは厄介事に好かれておるのう」


「本部とのいざこざが終わったばかりだろうに、今度は闇ギルドか?」


「好きで厄介事に首を突っ込んでいるわけじゃありません!」


「み~!」


「私にはそう見えるけど?」



 パミルさん酷っ!



「それで、どうするんじゃ?」


「ルーの奴がだいぶハンターを集めていたぞ」


「今回アジトに乗り込むのは俺たちだけです。ハンターさんたちには退路を塞いでもらおうと思います」


「ネロくんたちだけで大丈夫なの? 危険なことは駄目だからね!」


「「過剰戦力じゃ(だ)!」」



 パミルさんはグラムさんの実力を知らないからね。そう思うのも仕方がない。



 表に戻ってみんなと打ち合わせ。闇ギルドのアジトの場所は知っている。貴族街の一角で何度か前を通ったことがある。



「ネロ。地下の抜け道がわかったにゃ!」



 さすがペロ。NNNネコネコネットワークを使って闇ギルドのアジトに繋がる、王都の下を走る排水用の地下道の場所を確認してくれた。これで、鼠一匹逃がさない。


 ペロが確認してきた地下道にハンターさんを配置。残りのハンターさんはアジトを囲んでもらうよう依頼する。



「捕まえたら、さっきのをやるにゃ?」


「み~」


「さっきのってなに? ペロちゃん」


「ネロが悪人を魔界に送ったにゃ! あの人たちどうなったにゃ?」


「フフフ……殺してないよ。ちょとだけ魔界で休んでもらっているだけだよ。然るべき場所で役に立ってもらうよ」


「ネロが魔王の顔になったにゃ……ガクブル」



 ペロとパミルさんが抱き合って震えている。



「よし。出発だ!」


「み~!」


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