541神猫 ミーちゃん、ま、魔界……。

 まずは下っ端で様子を見る。監視していた連中を締め上げれば意外と簡単に吐くとは思うのだけれど、恐怖心を与えてからのほうがいろいろと喋ってくれると思う。


 あえて、監視していた連中を無視し、グラムさんに言って一人の下っ端を引きず出しリーダーの前に連れて来させる。



「さて、リーダーさん。この男はあなたの部下で間違いないですね?」


「……」



 うんともすんとも言わない。猿轡してるのだけど、頷くくらいはできるでしょう?



「違うのかな? ここに集まったのは闇ギルドの寄せ集め?」


「……」



 やっぱり、だんまりを決め込む。



「仲間じゃないってことだね。じゃあ、この人がこの世から消えてもなんとも思わないよね?」


「……」



 若干、俺を見る目がきつくなる。



「沈黙は肯定と取るよ?」


「……」


「そうか、可哀そうに見捨てられちゃったね。さようなら、恨むなら君の上司を恨んでね」


「うー! うー!」



 暴れる男を無視して、指をパチンっと鳴らせば青白い閃光を放なたれ、リーダーの前に引っ張り出された男が消える。



「今頃、魔界の亡者と仲良くしているだろうね。さあ、次の生贄は誰かな?」


「……」



 沈黙を貫いているが、目を大きく開き顔中汗だらけになっている。



「ネ、ネロが、こ、怖いにゃ……」


「にゃ、にゃ……」


「「ガクガク、ブルブル……」」


「み、みぃ……」



 ルーさん、レティさんもドン引き。スキニーさんとゼルガドさんは抱き合って震えている。グラムさんは普通だな。ミーちゃんは片棒を担いでいるのに、その態度はどうなのよ!


 一人の男に目を向けてから、グラムさんに目で合図すれば、暴れる下っ端を引っ張って連れて来る。選ばれるのは並んでいる順ではなく、完全なランダム。と思わせて、監視していた連中の近くの男を選んでいる。



「この人も知りませんか?」


「……」


「そうですか、残念です」



 パチンっと指を鳴らせば光と共に男が消える。


 リーダー、血走った目で俺を見てくるが、だからなに? って感じだね。



「そろそろ話す気になったかな?」


「……」



 まだ、沈黙だ。なかなかしぶとい。というか、喋らないほうが、監視していた連中の恐怖心を煽れるからいいのだけどね。


 もう少し、大きく揺さぶってみるか。



「そうかぁ、なかなか強情だね。グラムさん、女を全員ここに並べてください」



 六人いた女性が引っ張りだされ並ばせられる。暴れるので重力スキルで抑え込んだ。


 俺を見る目は恐れ、そして殺さないでと懇願。人を殺そうとしておいてなんて奴らだ。まったくと言っていいほど、情状酌量の余地はない。



「魔界の亡者は女好きでね。送ってやれば大変喜ばれる。まあ、送られた者は早く殺して~って思うだろうけどね」


「うー! うー!」


「なにか話したいことでもあるのかな? グラムさん、そいつを話せるようにしてあげて」



 リーダーの猿轡を外した瞬間。とても人には聞かせられない罵詈雑言が飛び出す。


 パチンっと指を鳴らし女六人を消せば、今度はまた黙り込んで俺を射殺さんとばかりに睨んでくる。


 さて、そろそろ頃合いかな?


 リーダーにまた猿轡をして、監視組の五人を引きずり出してもらう。五人は顔面蒼白。抵抗する気さえ失っている。股間の辺りが濡れているのが見えるけど気にしない。



「仲間を見捨てでもリーダーさんは喋ってくれないようなので、可哀そうなみなさんに選択肢を差し上げましょう。そうですねぇ。五人のうち重要なことを聞かせてくれた人だけ魔界に送らないであげましょう」



「「「「「うー! うー!」」」」」



 猿轡を取った瞬間、出るは出るはの大盤振る舞い。書き留めるのが大変なほど堰を切ったように喋り出す。


 今回の襲撃はこの国の闇ギルドと共謀して、国外の闇ギルドを手配して行った。


 裏にいるのはこの国の貴族。貴族派の東辺境伯派だった貴族だけでなく西辺境伯派の貴族、それに国王派の北辺境伯派の貴族までいた。


 酷いのは俺の属する宰相派の貴族の名まで出てきた。そのうえ、ロタリンギアと繋がる貴族がいまだにいることもわかった。


 ルミエールの貴族、救い難いな……。


 主要貴族とアジトの場所も吐いてくれた。リーダーの顔を見ると間違いないだろう。


 さて、こいつらに用はなくなった。


 パチンっと指を鳴らし、五人を消す。


 さすがにリーダーも驚いた表情になる。というか、驚くほどのことか?



「なかなかいい芝居でしたよ。リーダー」



 リーダーの顔が更に驚いた表情に変わる。残った闇ギルドの連中も驚きの表情だ。まさか、リーダーが裏切っていたなんて……ねっ。



「約束どおりあなたの命は助けましょう。ほかは消しますね」



 パチンっと指を鳴らせば、リーダーを除いた全員が消える。


 嗚咽を洩らし、絶望に打ち拉がれるリーダー。髪が真っ白に変わっていた。


 ちょっとやりすぎた感はあるけど、後悔はしていない。どうせ、闇ギルドを待つのは極刑。



「あのおっちゃんに同情してしまったにゃ……」


「にゃ……」


「ここまで落とすとは、さすが魔王……」


「ネロさん、やべぇ~」


「さすが我が夫。やる時はやる男だな。少年」


「「「ガクガク、ブルブル……」」」


「みぃ……」



 スキニーさんとゼルガドさんが抱き合う中にルーさんも加わっている。そこまでか!


 それに、ミーちゃんその目はなに!? ミーちゃんも、了解したのだから共犯だよ! 悪いことはしてないけど。



「み、みぃ……」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る