540神猫 ミーちゃん、がってん任しとけぇ~。

「やれ!」



 馬から降りて武器を構えた闇ギルド連中に、俺と話していたリーダーらしき男が指示を出した。


 弓を持つ者はいない。矢の攻撃を気にしなくていいのは僥倖だ。


 ただでられるとでも思っているのか? 分身体を出すと、分身体が雷スキルを扇状に展開。っちゃ駄目だよ?


 しかし、客観的に見たのは初めてだけど、その姿はまさしく魔王。どんな贔屓で見ても正義のヒーローには見えない……。伸ばした手から五本の雷が蠢く蛇の如く敵を襲う。正直、自分自身のことながらドン引きしてしまう。


 間違いなくこれは悪役ヒールの戦い方。歴代の勇者はこの雷スキルでどういう風に戦っていたのだろう。戦い方によっては主人公ヒーローのように見えるのだろうか?


 つくづく思う、見た目って大事だよねぇ。


 ここで、ドラグラブラットなんて使ったら、自分を魔王だと認めさせるようなもの。


 正直、ドラグラブラットが発動可能なので、倒すだけなら簡単なんだよねぇ。でも、こいつらからは情報を聞き出さなけれならない。だから、っちゃ駄目。正直、面倒。


 相手は魔王登場に驚き戸惑い、攻撃どころではなくなっている。統率もなにもあったものじゃない。なにより、近づくことすらできないのだから。



「ネロそっくりの化け物が出てきやがった……」


「化け物じゃないんですけど……。分身スキルなんですけど……」



 スキニーさんも馬車の陰から俺を見てガクブルと震えている。ちょっと凹む……。


 それはさておき、援軍を呼ぼう。殺さず捕らえるには俺一人では手に余る。


 さて上手くいくかな? この距離で試すのは初めてだ。家の馬舎の前にあらかじめ決めておいた記号を目の前に思い描く。空間に穴が開くとペロと目が合った。



「あっ、ネロにゃ!?」


「にゃ!?」


「穴が開いたと思ったらネロさんが!?」


「魔王ネロは、なんでもありだな~」


「み~」



 うるさい! さっとこっちに来い!



「なあ、私たちは必要だったのか? 少年」


「ネロ無双じゃねぇ?」



 まあ、確かに、今の状況を見ると必要ないかも? 相手は完全に逃げ腰だからね。だけど、ここで逃がすわけにはいかない。



「殺さず捕らえてください。多少手足がなくなっても構いません」


「また手加減か……」


「グラムさんはで手加減なしで戦っていいです」


「ネロはオーガか……」


「み~」



 グラムさんにはそのくらいがちょうどいい。



「しょうがにゃいにゃ~。じゃあ、パッパッと終わらせるにゃ!」


「にゃ!」


「「おぉー!」



 この状況に危険なしと、ミーちゃんはネコカップゴーレムとじゃれあい始めた。自分で操作しているネコカップゴーレムとじゃれあって楽しい?



「み~」



 ミーちゃんが、コロコロとネコカップゴーレムと転げ遊んでいる間に、決着が着く。


 手加減しているとはいえ、ペロとグラムさん、宗方姉弟の前ではこの闇ギルド連中では役不足。唯一、腕がよさそうだった闇ギルドのリーダーでさえ、ペロの足元にも及ばなかった。


 ちなみにレティさんは俺の護衛に回って手を出していない。というより、ミーちゃんとネコカップゴーレムがじゃれあっているのを見て、手をワキワキさせている。あなたは何をしに来たの?


 さて、呆気ないほど目の前の集団は簡単に沈黙した。



「まだ、くだらぬものを斬ってしまったにゃ~」



 今のペロなら鉄でも斬れると思う。こんにゃくは斬れないけどね。


 セラとルーさんはこの集団を監視していた連中をお縄にしてきた。背後から襲ったら、腰を抜かして動けなくなったそうだ。腰を抜かすって、こいつらなにしに来たんだ?


 総勢六十五名、生きたまま捕らえることができた。中には女性までいる。大捕物だな。


 馬も六十五頭手に入れたので売ればウハウハだ。監視していた連中は装備品もいいものを装備していた。もちろん没収。闇ギルドを雇った連中の一味かな? 残念ながら、証拠になるようなものは、なにも持っていなかった。


 全員縄で縛り上げ猿轡をして座らせ並べる。なかなかの壮観だ。


 怪我した連中を俺の回復スキルで回復っさせていく。善意の行動ではない。回復スキルの熟練度上げのためだ。回復スキルは怪我を直さないと熟練度が上がらない。こんな時じゃないと熟練度を上げる機会がない。



「こいつら、どうするにゃ?」


「もちろんすべてを吐いてもらうよ」


「拷問にゃ!」


「まあ、そんなところかな」


「「魔王の本領発揮だ……」」



 本領発揮って俺が何をするってんだよ! 野蛮なことをするつもりはないぞ。脅しはするけど。



「お手並み拝見といこうじゃないか。少年」


「いいでしょう。義賊ギルドの拷問が可愛いと思えるほどの、絶望と恐怖を味わせてあげましょう」


「やべぇ、ネロが本気だ……」



 さて、ミーちゃんちょっとばかし耳を貸してほしいのですけど。



「み~?」



 ごにょごにょでごにょごにょなのよ。



「み~!」



 よし、ミーちゃんとの打ち合わせは完璧。じゃあ、OHANASHIのお時間だ!



「み~」



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