523神猫 ミーちゃん、言っちゃった……。
ミーちゃんはそれでも人の死は痛ましいと言うけど、それはまた別の話だと思う。
「我々は選ばれた十二使。ハンターギルドを起ち上げた先祖から、代々受け継がれし者たちぞ!」
初めて聞く話だが、結局何が言いたい? ハンターギルドを起ち上げたのは、おそらく生き残った神人のことだろう。お前らじゃないじゃん! たんなる、虎の威を借る狐だろう!
「それがどうした? さっきから笑わせることばかり言う。貴様らは神人の抜け殻、なんの力もない亡霊でしかない!」
「!?」
「み、みぃ……」
あっ、つい言っちゃった……。俺の馬鹿! 管理者と言おうとして、神人って言っちゃたよ。
「今、何と言った!? ネロくん!」
「ネロくんは何を知っている!?」
「今言ったとおりですよ。こいつらはこの迷宮の管理者であった神人の子孫。それも神人の力のほとんどを失ったまがい物。過去の栄光を引きずった、ただの亡霊にすぎない」
「我らを愚弄する気か!」
「み~?」
いちいち、面倒だな。もう一回言わないと駄目なんだろうな。ゼストギルド長とセリオンギルド長も、さっきと違って聞き漏らさないとばかりに俺を注視している。
「俺は管理者と会ってすべての話を聞いている」
「ま、まさか……まだ生きた管理者がいるというのか? どこで会った? 教えろ!」
それ、二度目なんですけど? この人、本当に洗脳されていたのか? 洗脳されていたのはほんの一部だけなんじゃないか?
そもそもが人格破綻者なんじゃないの?
「み~?」
「そんなことすらしらずに、神人の子孫を謳うとは、片腹痛いわ! 身のほどを知れ! 亡霊どもめ!」
「ぐっ……」
なんか俺格好よくね? 勧善懲悪もののお殿様みたい?
「ネロくんが壊れたかのう?」
「いえ、元からこんなものでしょう?」
「み~?」
壊れてないから! ディスるのもやめて! ミーちゃんもどうかな~? って逆にどういう意味ですか!?
「お前たちが選ばれた? 笑わせるなよ。逆だ。神人たちはこの世界から選ばれなかったんだよ。使命を捨て、ある者はこの星から去り、ある者は陰ながら少しだけ人族に手を貸しているだけ。既に表舞台から去った存在なんだ!」
「み~」
驚いた様子を見せているので、何も知らされていなかったか、途中の代で忘れられたか、あるいは意図的に都合が悪いので消されたかだ。おそらく後者だな。
「そんなことも知らずに選民などと自惚れてる奴を信用などするものか! お前らなどに貴重な情報源を渡す義理はない」
「ネロくんは博識じゃのう。しかし、容赦がない。
「ですが、その話が本当なら話は別ですぞ。ハンターギルドの本部、それも十二使が選民思想持ちとはなれば由々しきこと」
「み~」
本当のことです! 嘘じゃありません!
「……ならば、そのすべて聞かせろ! 我々には聞く権利がある!」
「みぃ……」
「ミーちゃんの言うとおり。お前、さっきから何様だよ! それが人にものを頼む態度か! そういう態度が慢心を生み、魔王に付け込まれるんだよ。喉元過ぎれば熱さを忘れるか? 呆れてものが言えない」
「十分に言っておるがのう」
「あれは相手に精神的ダメージを与えマウントを取るための口撃、高度な戦術ですぞ」
「み~?」
そ、そこまでは考えてないかな?
「そこまでにしておくのじゃ、シモンよ。我々の完膚なきまでの完敗じゃよ」
老女が起き上がってきた。薬が切れたのか? 思ったより早いな。なにかの耐性スキル持ちか?
「しかし、ヨハネよ! この小僧は我々の存在自体を否定しているんだぞ!」
「だからこそ、恥を忍のんでその者に頭を下げても聞かねばならぬのじゃ。それにユダがおらぬ。本部内部にモンスターがいるのも解せぬ」
「ユダは行方不明だ。代わりにそのモンスターがユダに成り代わっていた。我らはそのモンスターに操られていたようだ」
「なんたることじゃ……。どうなっておる? 分かる範囲で説明を頼む」
老女と老人が言葉を発しず向かい合う。テレパシーか? その力は残っているのか。
「千手業衆と修験衆が全滅じゃと……。ゼスト! なぜ止めんかった! 修験衆にはそなたの元部下もおったのじゃぞ!」
「洗脳されておったおぬしらがそれを言うか? 我々を殺せと命じたたのはおぬしらじゃろうに」
「……されどセリオンもいたのじゃ、なんとかなったのではないか!?」
「私の土スキルは、本部の中では本来の効果を発しなかった。ゼスト殿も私も戦闘では役に立っておらんよ」
「では誰がやったというのじゃ!」
ゼストギルド長とセリオンギルド長が俺を見る。俺だけじゃなくて、レティさんもグラムさんも白狼二頭もいるよ? なんで俺だけ見るのかな?
「なるほどそうか、あの者がブロッケン辺境伯なのじゃな。ブロッケン辺境伯よ、そなたが我らを恨んでおるのは知っている。じゃが今までそなたは命まではとろうとしなかったのに、なぜ今回はみなを殺めた?」
はぁ~? なにを言ってるのこの人? 見当違いも甚だしいね、
「み~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます