521神猫 ミーちゃん、地獄もお墓も好きじゃないです。

「知っとったが、ネロくんは狡賢さでもピカイチじゃな」


「み~!」


「まさか東の魔王とは。以前ネロくんに話を聞いていなければ信じられん話だ」



 セリオンギルド長の話は仮説を立てたときの話だ。それはいい。だがしかし! ゼストギルド長の狡賢いと知っていたってどういうことよ! ミーちゃんのそうだね! ってのもどういうことよ!?



「み、み~♪」



 褒め言葉だよ~♪ そ、そうかなぁ。照れるなぁ……なんて言うと思うたかぁ! 今日の夜のデザートお預けね!



「みっ!? みぃ……」



 そんなことをしていると、グラムさんが黒大蛇の顔を鷲掴み。アイアン・クローか!?


 黒大蛇も負けじとグラムさんの体に巻きつき締め上げる。グラムさんはなんともなく涼しい気だな。


 黒大蛇の頭からミシミシと聞こえてはいけない音が聞こえ始める。



「グラムさん、殺さないでくださいよ!」


「み~!」



 グラムさん、はっ! とした顔をしてアイアン・クローを緩めるが、黒大蛇の舌がだら~んと垂れ下がっている。っちゃった?



「この程度では死なん」



 そう言って、黒大蛇を二か所玉結びにして、ポイっと捨てた。



「ネロくん、そ奴をどうするつもりじゃ?」


「取りあえず、ご報告に王妃様の所に持って行こうかと。欲しいならあげますけど、抑える術はありますか?」


「無理だな。本来であれば本部の仕事。だがこの有様ではな」


「我々には、ちと荷が重すぎる。残念じゃがな」



 じゃあ、そういうことなので、俺の最大重力である五倍を黒大蛇にかけておく。重力五倍はグラムさんでもまともに動けないから、こいつでは逃げられないはず。一応、グラムさんに見張ってもらう。



「十二使はいつ目を覚ますかのう?」


「即効性の眠り薬というだけです。引っ叩けば起きますよ」



 ゼストギルド長とセリオンギルド長は一人の老人を起こすようだ。


 俺はこの部屋の先に興味があるので、それには付き合わず進む。



『・・・・・・上位者マスター権限を確認。開錠します』



 あれ? 開いた。今回はマスターキーを身に着けていないのに開いた。マスターキーは関係ないのか? わからん。


 ドームの先にあった扉を抜けると、またドームがある。ドームに入った時は薄暗く照明が不定期に点滅していたけど、徐々に点滅が収まり明るくなった。


 ドームの中には、いくつもの細長い丸形の箱が並んでいる。その一つに近寄ると上部は透明で中が窺えるようになっている。


 中を覗けばミイラが横たわっていた。



「みぃ……」


「これはなんだ!? 少年!」



 レティさんも入って来たのね。まあ、見られてもいいか。



「おそらく、神人の成れの果てかな?」


「神人……おとぎ話の住人ではないのか?」


「流れ迷宮を管理しているのが神人です。レティさんも一度会ってますよ」


「会っている? むっ? あの時の男……管理者か!?」



 地中船が故障したのだろうな。直せる人がいなかったのだろうか? あるいは、最初に死んだか?


 クイントの流れ迷宮も、下手をすれば同じ道を辿ることになるのだろう。そんなこと言ってたからな。


 すべての中身を確認すると、六つだけ空でそれ以外はミイラが入っていた。


 高貴な選民ねぇ。数が会わないから子孫か? 一番奥の壁に剣が十本飾られている。鑑定するとオートソードとある。


 そのうち三本だけが妙に凝った意匠が施されている。



「サーベルだな。少年」



 その剣を取り鞘から抜くと、刃が青白く光っている。暗黒卿の技以外に武器まで手に入れてしまった。でも、青色は超能力騎士のほうか?


 レティさんも別の剣を抜いてみるが光らない。俺の剣と交換しても光らない。代わりにレティさんから渡された剣が光っている。



「刃引きされている。訓練用かな? 少年」



 模造刀ってこと? 専用の光るおもちゃか!? でも、格好いいからもらっておこう。この凝った意匠の剣は腰に下げておこう。



「みっ!?」



 盗人っか!? って失礼な言い方やめてよね。戦利品だよ、戦利品。迷惑料込みのね。


 さて、神人に会えるかと思ったけど残念。もうここには用事はないな。戻ろう。





「ま、まさか、神域に入れたのか……?」



 神域ねぇ。地獄か墓場の間違いじゃない?



「み、みぃ……」



 最初のドームに戻ると奥から出てきた俺たちを見て、ギルド長たちに尋問されていた老人が驚いている。



「奥に何があったんじゃ?」


「お墓です」


「貴様! 本当に入ったのか! 我々でさえ入れぬ神域に!」


「み~?」



 貴様って、あなたなに様? それにこの人たちは入ったことがないのか? 神人の子孫だと思っていたけど違うのだろうか?



「それがなにか?」


「我々、選民でさえ入れぬ神域に、なぜ貴様が入れる!」



 お年寄りは敬うものと教えられてきたけど、こうも上から目線だとムカつくね。



「選民だぁ? 選民ねぇ。はっ、笑わせてくれるね。魔王に敗れて逃げ出した連中……いや違うな、その亡霊風情が!」


「み~!」



 ゼストギルド長とセリオンギルド長は話についてこれずフリーズ状態。


 ギルド長たちは、こいつらをどうするつもりだろう?



「み~?」



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