519神猫 ミーちゃん、気に入ったぁ~?
ゼストギルド長たちが話を続けている間に、俺も扉を調べてみる。鑑定しても扉としか出てこない。
扉なら開錠のネックレスで開くとは思うけど、ゼストギルド長たちがいる所では使いたくない。
もう少し、よく調べてみよう。
「み~」
ギルド長たちが手をつけた場所は、よく見ると手のひら大に四角く色が変わっている。鑑定で見れば認識装置とある。人物を認識するのか? 待てよ、ここは流れ迷宮だよな。
試しに流れ迷宮の管理者からもらった腕輪を着けて、俺も手をつけてみる。
『・・・・・・
プシューと扉が開いちゃったね……。まさかのSFか!?
「み~!」
「な、な、なんじゃ!?」
「ネロくん! 何をした! 今の声はなんだ!?」
「さ、さあ?」
知りません! 触ったら開いただけです!
嘘です……。そして、わかった気がする。クイントの流れ迷宮でもらった、腕輪式のマスターキーが間違いなく関係している。神人の遺産を使えるようになるマスターキー、この地底船も遺産ということだね。
「ネロくんは何かと謎が多いのう」
「み~?」
「よいではないですか、扉が開いたのです、余計な手間が省けたではないですか」
「そ、そうですよ、開いたんだからいいじゃないですか。さ、先に進みましょう!」
「う、うむ。そうなんじゃが、なにか納得がいかんのう」
ここからは敵の本城。何があってもいいように先頭はグラムさん。最後尾はレティさんと白狼二頭の順に進む。
通路は二人がすれ違えられる幅。左右に等間隔で扉がある。ゼストギルド長、やはり無視して進んで行く。
もったいない。
「みぃ……」
突き当りに到着。扉がある。ゼストギルド長が壁に手をつけるが開かない。セリオンギルド長が目で、お前がやれと指示。仕方なく壁にミーちゃんの肉球を押しつける。
「み~?」
プシューと扉が開いた。今度は声はしなかったけど。
「子猫くんでも開くのか……」
「なんなのじゃいったい!」
いやぁー、ミーちゃんはマスターキーを着けてないけど開くんだね。冗談のつもりでやったけど、ちょっとびっくり。神猫だからかな?
「み、み~」
中はドーム状になっており、二メルほど上にドームに沿って円状に机と席があるようで、そこに、一人、二人……十二人の老人が机に腕を組み、俺たちを見下ろしていた。
「み~?」
「……まさか、ここまで侵入されるとはな。ゼストよ、どんな裏技を使った?」
「言うと思うか? 妖怪どもめ」
「貴様ら本部は何を考えている! これ以上戦火を広げれば収集がつかなくなるぞ!」
「……英雄セリオンともあろう者がなんと小さいことを。……決まっておるではないか、いかに犠牲を払おうとも魔王たちを炙り出し、殲滅させるためよ」
「「正気か!?」
さっきから正面の老人しか喋っていない。周りの老人たちは一言も声を出さず頷いているだけ。気味が悪い。それにあの、一呼吸空けてから話す、あの間がなんとも不気味だ。
鑑定しても何も出てこない。こんなことなんて烈王さんと迷宮の神人を鑑定した以外になかったのに。この老たちは俺の鑑定が効かないくらい、魂の器が成長しているのだろうか? それとも特殊なスキルかAFの力か?
「み~?」
老人とゼストギルド長たちの話は続く。どう聞いても平行線だ。老人たちの意図が見えない。
「ネロ。正面から左に三人目の奴はモンスターだぞ」
「み、みっ!?」
マジで!? グラムさんが耳元で囁いて教えてくれた。なんで、こんな所にモンスターがいるんだ?
牙王さんクラスか人化スキル持ちなら人型になれるだろうけど、どう考えてもモンスターにとってここは敵の総本山。話のわかる良いモンスターってことは……ないよねぇ~。
間違いなくなにか裏がある。今の状況がそうなのか?
「俺が先制を仕掛けます。殺さず捕らえてもらえます?」
「腕や足の一本、二本は構わないな?」
「生きていれば構いません」
後ろにいるレティさんに目で合図して横に来てもらい、今からちょっとばかりグラムさんが暴れるので、ゼストギルド長たちのことを頼む。
「少年は大丈夫なのか?」
「俺のことは気にしなくていいです。これがありますから」
レティさんに千手業衆の体から取り出したAFを見せる。
「なるほど。了解した」
「では行きますよ」
「み~」
正面から左に三人目の老人に手をかざし、雷スキル発動。五本の指から青白い光がうねりながら目標に到達。
「グッ、ガガガガ……」
「な、なんじゃ!?」
「また、ネロくんか……」
「勇者か!?」
雷スキルを受けた老人が全身を痙攣させているが、感覚でそれほどダメージを受けていないことがわかる。こいつ、間違いなく強いぞ!
それから、セリオンギルド長、そのまたやらかしたみたいな言い方はなんですか! 俺はいつもおとなしく、そして慎ましく、七尺去って師の影を踏まずを旨としているのに。
なんて思ていたら雷スキルを弾かれた!?
「グラムさん!」
「……いざ参る」
あれ? 千手業衆の真似ですか? もしかして、グラムさん気に入った?
「み~?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます