518神猫、ミーちゃん、しょ、商人の鏡かなぁ~?

 全員倒したけど、白も黒も現れない。どうやら、これで全員のようだね。



「みぃ……」



 残念がるミーちゃんをよそに、俺は倒された千手業衆の検視に入る。男の裸なんて見ても楽しくないけど確認は必要だ。



「何を探しとるんじゃ?」


「千手業衆の秘密を」


「「秘密?」」



 気持ち悪いけど赤マフラーの体を触って確かめて行くと、見つけた。首の後ろと胸、そして背中に二つ埋まっている。


 小剣を使い肌を斬り裂いて、目的の物を探す。正直、気持ちのいいものではない。



「みぃ……」


「敵とはいえ、死者の体をを汚すのは関心できんぞ。ネロくん」



 そう言う、セリオンギルド長に取り出した物を水で洗い渡す。



「これは?」


「AFですね」



 作業を続けながらセリオンギルド長の問いに答える。



「「AF(じゃと)!?」



 直径五ミル長さ二センの筒状のAFだ。こんなAFもあるんだね。赤マフラーの体の中にあったAFは火、危機察知、槍、幻影の四つ。レティさんの持つスキルは幻影のようだ。


 ほかの千手業衆の体からAFを取り出せば、一人に付き四つ埋め込まれていた。今、手元に二十個のAFがある。ウハウハだ!



「み~!」



 しげしげとAFを見ているギルド長二人。お二人も初めて見る物なのだろう。



「千手業衆は意図的に作られた人造スキル持ち。おそらく、身体能力は元々高くて更に身体強化スキルを持った者が、体にAFを埋め込まれ千手業衆になるのでしょう」


「そんな秘密があったとはのう……」


「ネロくんはどうして気づいた?」


「み~?」



 どうしてって、鑑定で出てこないのに、スキルを使うとなればすぐにAFを思いつく。でも、観察しても指輪や腕輪などのアクセサリーをしていない。AFは体に直に身に着けていないとスキルは発動しない、


 となれば、体の中にあるのでは? と思いつくのは必然だ。まさか、こんなに小さなAFとは思わなかったけどね。


 それをお二人に説明。



「鑑定持ちの強みじゃな」


「鑑定を持たぬ者には思いつくまい」


「み~」



 それより、これをどうやって手に入れたのか? 考えられるのは大まかに二つ考えられる。


 元のAFから削り出した。


 あるいは、この神人の地中船に元々あったか、これを作る装置があるかだ。これはお二人には言えないな。



「削り出すのは無理じゃな。AFは壊れれると効果を失うからのう。ここまで形を変えれば、壊れたことと同じじゃろう」



 そうなんだ。壊さないように気を付けよう。となると、考えられるのはもう一つのほうだな。確認のしようがないけど。



「この遺体どうしますか?」



 白狼にやられた無残な黒子も合わせると、五十以上ある。



「このままでよかろう」


「本部の者が片付けるだろう」



 あと、どれほどの人数が残っているか知らないけど、頑張ってください。一レトにもならないことはしたくない。



「み、み~?」



 さて、ここがクイントの流れ迷宮と同じなら神殿に下に続く道があるはず。まあ、ゼストギルド長は何度も来てるだろうかついて行こう。


 案の定、神殿に下に続く道があった。クイントの流れ迷宮と違うのは、降りた先が広い空間になっていて奥に続く道と扉がいくつもある。


 扉の中を確認したかったけど、ゼストギルド長たちがスタスタと奥に進んでいくので、仕方なくついて行く。


 お宝があったかもしれないのにね。



「みぃ……」



 道の奥は突き当りになっており、無機質な壁に扉がある。金属というよりプラスティックのようにもメタリック塗装されたようにも見える。


 ゼストギルド長が扉の横に手をつけているけど、何をしているんだ?



「み~?」


「さて、どうするかのう」


「開かぬのですかな?」


「開かぬな。セリオンもやってみよ」



 セリオンギルド長も同じように壁に手をつけるけど、何も起きない。



「開きませぬな」


「我々を中に入れたくないのであろう」


「ここまで来て困りましたな。少しばかり手荒にいかせてもらいましょう」



 セリオンギルド長が俺たちに離れるように言って、扉の前に立つ。地面から土の槍が飛び出し扉に当たり砕け散る。



「ネロ。ここは……」


「わかっています。ちなみにグラムさんはあの扉を壊せますか?」


「無理だな。迷宮を壊すことは可能だが、本体のあれは異常な硬さだ。長なら可能だろうがな」



 地中を進む船だ、頑丈に決まっている。如何にセリオンギルド長でも傷さえ付けられないだろう。それに迷宮内は土スキルが効き難い。



 何度も扉を土の槍が襲うがビクともしない。



「駄目ですな。如何します?」


「ここまで来ておきながら無念じゃのう。しかし、千手業衆を倒したことにより、奴らの手足を奪ったに等しい。当分はこの穴倉からは出てこれんじゃろう」


「その間にギルド長に緊急招集を掛けますかな?」


「招集を掛けるとすれば大陸全土にじゃのう。今回の件を公表し、本部のあり方に一石を投じる必要があるじゃろう」


「この場所の監視もせねばなりませんな。いつまでも籠城はできませんからな」



 なにやら大事に発展しそうな感じ。いや、俺たちがここまで来た時点で今更か。



「み~」







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