510神猫 ミーちゃん、それさっきいったよね~?
「早い帰りじゃな。セリオンまで連れてくるとはのう」
ハンターギルド内に入るとすぐにパミルさんが俺たちに気づきギルド長室に案内してくれた。
「うちのは特急便なので」
「み~」
「なるほどのう」
わざと勘違いするように話をすれば、思惑どおりの展開になった。勘違いしていてもらったほうが面倒がなくいいからね。
「久しいな。ゼスト殿」
「うむ。セリオンもな。話はどこまで聞いておる」
「すべて聞いた。ゼスト殿の見解は?」
「本部に問い合わせたがのう。本部の指示に従えの一点張りじゃ。あの化け物どもがこの程度のこと気づかぬとは思えん。何か裏がありそうじゃのう」
裏があろうが表があろうがどうでもいい。この指示を真に受けたハンターがブロッケン山に来る前に何とかしないと大変なことになる。
「それで、どうするおつもりですかな?」
「本部に乗り込んで直接話をするしかあるまい」
「あそこへは簡単には入れませんぞ?」
「そこは儂がなんとかする。問題は護衛じゃ。さすがにこの歳で戦いはつらいからのう。本部故生半可な腕の者では太刀打ちできん。五闘招雷がおればよかったのじゃがな」
「み~?」
戦うことが前提なのか? もしかして、討ち入りか!?
「俺も連れて行ってくれるなら、優秀な護衛を連れて行きますよ?」
「み~」
「グレンハルトを呼ぶつもりかのう?」
「いえ、今グレンハルトにフォルテを離れられると困ります。神猫商会の警護担当者二人です」
「その者はどれほどの腕前じゃな」
半端なく強いです。じゃあ、わかり難いか。
「一人は五闘招雷と同等、もう一人は五闘招雷が束になっても勝てないくらいですかね」
「み~」
「五闘招雷が勝てんじゃと!? そんな者おるわけなかろう! 五闘招雷の力を、目の前で見ておるネロくんが一番知っておるじゃろうに!」
ゼストギルド長が五闘招雷の力を信じ、その力を疑わない気持ちはわかる。セリオンギルド長は俺の意図に気づいたようで、俺の後ろに立つグラムさんを横目で見ていた。
「確かに五闘招雷の力は英雄の名に相応しいです。しかし、それは人族の中でのこと」
「なんじゃ、それではネロくんの護衛が人族ではないような言い方じゃのう。噂のドラゴンでも呼ぶつもりかのう」
「みっ!?」
あれ? 当てられてしまった……つまらない。
「はぁ……さすがゼストギルド長。まさか知っていたとは。後ろのグラムさんはドラゴンです」
「ん? 俺のことか?」
「み~」
グラムさんまったく話を聞いていないな。立ったまま寝てるんじゃないだろうね?
「ド、ドラゴンじゃとぉ!?」
「み~?」
ん? ゼストギルド長、何を驚いているんだ? 今、自分で言ってたでしょうに。
「セリオン! なぜ、驚かん!」
「なぜと言われても、ここに来るときに聞いていたので」
「なんたることじゃ。こんな近くにドラゴンがおるとは……。陛下や王妃様は知っておるのか?」
「王様には話していませんが、王妃様には話していますので知ってるんじゃないですか?」
「み~?」
「ネ、ネロくんは他人事じゃのう……」
いえ、正しく他人事。俺にはグラムさんがドラゴンだろうが、ドラゴンでなかろうが関係ない。ミーちゃんの下僕それでいいじゃないか。
「なぜ、ドラゴンのグラム殿がネロくんの護衛を?」
「俺はドラゴンの長、烈王さんとはいろいろあり懇意にさせてもらっています。とくに、ミーちゃんは烈王さんのお気に入りですからね。俺とミーちゃんの護衛にグラムさんを付けてくれました」
グラムさん何か言いたそうだけど、何も言うなと首を振ってみせる。
「なんとも子猫の護衛とは、何も言えん……」
「そのグラム殿だけでも過剰戦力だとは思うが、もう一人の護衛はあの魔族の女性かね」
「その呼び方好きじゃありませんね。レティさんは氷族と紅霊族のハーフです」
「み~」
「すまん。失言だった。それで、どれほどの腕前なのかね?」
「さっきも言いましたが五闘招雷と同等かそれ以上ですよ」
セリオンギルド長もゼストギルド長も信じられないといった顔。
「それほどの腕の持ち主が、今まで知られずにいたのはどうしてかね?」
「闇ギルド……彼女は義賊ギルドの人間でした。先代の女帝が手塩にかけ育てた逸材です。表に名が知られていないだけで、その筋ではファントムの二つ名でとおっていたみたいですね」
そんなことを、フレアさんが言っていた。俺はまったく知らない。
「ファントムじゃと!? 女帝の懐刀と呼ばれた者ではないか!」
いや、だから、さっきそれ言いましたよね?
「み~?」
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