511神猫 ミーちゃん、こねこね、ねこねこ、み~!
「そんな大物がなぜ、ネロくんのそばにいる?」
「前女帝と俺は同郷でして、郷の話で意気投合しましてね。ゼストギルド長はご存じですけど、ちょうどその頃、闇ギルドが俺を狙っていたのでその護衛に付けてくれました。まあ、今も闇ギルド連中は俺を狙っているみたいですけど。ははは……」
貴族の闇は深い。東辺境伯の反乱に関わっていない貴族でも闇ギルドとの繋がりがある者が多い。心の強い者でないと、ほんの小さな心の隙間に魔の手が伸び、払い除けられずその手を掴んでしまう。
「ネロくん、さすがにそれは笑い事では済まされん気がするぞ?」
「そうですか? 逆にウェルカムなんですけど? 馬鹿な貴族たちと手を組み俺を狙っているようなので、釣り出し一網打尽にして廃棄処分の予定なんですけどね」
「み~」
そう、心が弱かったからは免罪符にはならない。闇に手を染めた以上、罪は償ってもらう。特に俺たちに手を出せば、己の命かあるいはそれに値する財産が代償になる。クックックッ……。
「これが貴族になるということか……」
「あんなに可愛げがあったネロくんが、別人のようじゃ……」
「みぃ……」
いやいや、そこまで変わってませんよ! なんで、ミーちゃんも一緒になって、可哀そう子を見る目で見てるのよ!?
取りあえず、ゼストギルド長が早急に本部に行く準備を整え、準備ができ次第向かうこととなった。二日でなんとかすると言っている。
肝心の本部は王都から遠くない所にあるそうだ。馬を走らせれば、二の鐘分くらいで着くらしい。
「セリオンはその間どうするんじゃ?」
「大事の前だ、せっかくだゆっくりさせてもらおう」
「部屋を用意するか? もちろん、ギルド指定の宿じゃがな」
「誰があんな所に泊まるか! ネロくんの家に世話になる」
セリオンギルド長、言っちゃったよ。あんな所って言われるくらいの所に、俺たちは泊まっていたんだよね……。
「みぃ……」
「ほう。この老体が寝ずに働くというに、辺境伯の屋敷に泊まれるとは羨ましいのう」
「それが上役の務め。諦められよ」
本店に戻り、お団子を調達してから家に戻る。
「セリオンギルド長にゃ」
「にゃ」
「「お久しぶりです」」
「え、英雄セリオン!?」
ヤンくん、五闘招雷に続き英雄セリオンギルド長に会えて舞い上がっている。五闘招雷がヒーローならセリオンギルド長は神にも近い存在だろう。
お団子をペロに渡してセリオンギルド長の相手を任せる。
俺は夕食の準備だ。『グラン・フィル』で舌の肥えたセリオンギルド長を、唸らせる料理を作らねばならぬ。手は抜けない。
そこで考えた、料理の腕では『グラン・フィル』のサイクスさんの師匠には勝てない。勝てるのは豊富な食材とこちらの世界にない料理のレシピ。
それを活かす料理はラーメン!
前々から作ろうとは思っていたけど、中華麺の作り方を思い出せなかった。作り方というより小麦の種類なんだよね。
薄力粉は天婦羅で使っている。中力粉はうどんで使っている。強力粉はパンで使っているよね。ついでにデュラム小麦があるかは知らない。パスタがあるのだから同じような種類はあるのだろう。
ちなみに、中華麺は強力粉だと思い出した。中華麺特有のかん水もある。
材料を混ぜ玉子も加える普通の中華麺ではなく、たまご麺を作ろうと思う。
こねこね、こねこね、ねこねこ、ねこねこ?
「み~!」
ミーちゃん、こねこねは楽しいらしい。
本当は半日くらい寝かせたほうがいいけど、今日は夕飯の時間まで寝かせる。その間にスープと具の用意。
スープは鳥ガラと野菜、鰹節で取り、最後に昆布出汁を合わせる。
かえしは醤油ラーメン用に醤油、砂糖、すりニンニク、ごま油、塩、コショウ、隠し味に蒸留酒を少々。味噌ラーメンのかえし用に醤油ラーメン用かえしと味噌を1:3で混ぜる。
具は
味噌ラーメン用に野菜炒めを大量に作る。ごはんと食べてもいいくらいの出来だ。
酒の肴は魚のカマ焼きに、昆布があるので湯豆腐にしよう。ついでにニンジンを柵切りにして茹で、ゴマをすり潰し豆腐と水飴を入れてニンジンの白和えをつくる。わかめも茹でて適当な大きさに切り醤油ベースのドレッシングで味付け。
「これお魚かにゃ? にゃんてビューティフルな美味しさにゃ!」
「これ湯豆腐だよ! 姉さん」
「白和え……母さんの味だよ~」
「ネロくんの家では、いつもこんな豪勢な食事をしているのか……」
うちは腹ペコ魔人が多いですからね。こんなものですよ。脂の乗ったカマをほぐしてムニュムニュ姉妹の皿に出してあげると、夢中でハムハムしている。ミーちゃんは苦手のようで少しだけ食べて手を付けない。代わりにセラが美味しく頂いたようだ。
「にゃ」
「み~」
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