497神猫 ミーちゃん、貴族殲滅の言質はもらった~!

 言いたいことは言ったので、ウェルたちと再会を約束して大広間を出る。ルーカスさんが別室で待っているけど、このまま帰るわけにはいかない。


 そう、ミーちゃんだ。忘れていたわけじゃないからね。連れ去られたせいで、迎え行くしかないのだ。本当はすぐにでも帰って休みたい。心身ともに疲れた……。


 大広間の扉の所に見知った王妃様付の侍女さんが佇んでいる。俺の顔を見つけ近寄って来た。俺が出てくるのは待っていたらしい。


 侍女さんの案内で王妃さんの下へ行く。



「ブロッケン辺境伯殿。陞爵おめでとう」


「「「「おめでとうございます」」」」


「み~」



 王妃さんの祝いの言葉に合わせ侍女さんたちが頭を下げる、


 ぐぬぬぅ……まったくおめでたくない! 王妃様には思惑があって陞爵させたことだ。



「おめでとうごじゃいましゅ!」


「にゃ~」


「「「みゅ~」」」


「あ、ありがとうございます」



 レーネ様の屈託のない笑顔で言われては、返事を返すしかない。



「ネロくん。指輪の件、感謝します」



 王妃様以下全員が頭を下げてくる。べつに感謝などは必要ない。ミーちゃんからプレゼントされた指輪を返してもらいたかっただけだ。



「感謝は不要です。貸は変わりませんし、ミーちゃんの指輪を返してくれればいいです」


「み~!」



 ミーちゃんのお座りしている足元に指輪がある。ミーちゃんに近づくと指輪を咥えて渡してくれた。あの指輪だね。



「ミーちゃん、大事にするね」


「み~!」



 侍女さんたちがハンカチで涙を拭っている。そこまでか!?


 ニーアさんが布に包まれた何かを渡してきた。ミーちゃんの黒真珠のネックレスだ。箱にしまいスカーフと一緒に収納する。



「黒真珠のネックレス、凄い評判みたいよ。どこで売っているのか問合わせが殺到してるそうよ、ねぇ、ニーア」


「はい。三十はくだらない問い合わせがきているそうです。如何なさいますか? ネロ様」


「正直、貴族相手に商売は面倒ですね。黒真珠をお渡ししますので、王宮印で売ってください?」


「いいの? 神猫商会で取り扱えば、相当な利益が出るわよ?」



 ミーちゃんの気まぐれで集めた黒真珠だ。値段も捨て値だし気にしない。大量にある在庫が捌ければいいくらいだ。


 それに王宮印で人気が出れば、劣化版を庶民向けに神猫商会で扱えばいい。冗談抜きに山ほどあるのだ。なにせ、今現在もヴィルヘルム中の黒真珠が集まっているのだ。



「三七でいいかしら?」


「折半で構いません」


「み~」


「本当に?」


「えぇ」


「み~」



 ミーちゃん、売れると知ってホッとした表情。なにせ、黒真珠王だ。



「それにしても、ネロくんにも驚かされたけど、ユリウス様にも驚かされたわ」



 はてさて、どこまで本気だ。



「いい迷惑です」


「その割に、貴族連中を前に大見得を切ったそうじゃない」



 耳が早いなぁ。ついさっきのことなのに。しかし、すべてはブラフ。注目を集めるだけのパフォーマンスなのだよ!



「陛下は最終的にヒルデンブルグのように貴族をなくすつもりですよね? そのための布石ですよ。辺境伯が率先して返せば、下の爵位の者は返さざろうないでしょうから」


「そこまで考えてのことなの?」


「正直、面倒くさいので、一刻も早くお返ししたい思いを込めての発言だったのは否めません」



 侍女さんたちがクスクスと笑っているが、本音だからな!



「ネロ様。ですが、今回多くの敵を作りました。闇ギルドがネロ様を狙っている今、それに手を貸す貴族も現れましょう。ご用心を」



 ニーアさんが真面目な顔で言ってくる。


 それも百も承知。俺は新興貴族だから寄親も寄子もいない。守らなきゃならない貴族はいないから気が楽だ。すべての貴族が敵だと思えばいい。



「すべて敵で結構。俺は集魚灯ならぬ集害虫灯。害虫はさっさと集めて殺虫処分に限ります。上手くいけばこの国から多くの貴族が減りますよ」


「そ、そう、気をつけてね……ドラゴンが護衛してるから大丈夫とは思うけど」


「み~!」



 ミーちゃん、る気満々だ……。



「実際のところ、どこまでやっていいんですか?」


「好きにしていいわよ。今のネロくんはそれだけの地位にいるのだから」



 よし、言質はもらった。これでドラゴンブレスも合法だ。氷の世界ができるのか、光と共に消え去るのか、フッフッフッフ……。


「み、みぃ……」


「ネロくんが悪い顔をしてるわ……」




 ミーちゃんを抱っこして侍女さんの案内でルーカスさんとグラムさんが待つ部屋に移動。



「なんと言ってよいのか……おめでとうございます。ネロ様」



 男爵になった時は泣いて喜んでくれたのに、今のルーカスさんはどちらかというと困惑顔なんですけど?



「ネロの料理ほどではないが旨い料理だったぞ」



 グラムさんは出された料理を食べて満足のようだね。



「み~」


「ん? そうなのですか? 叩き潰せばいいのでしょう? 人族如きに、ミー様にもネロにも指一本触れさせませんよ」



 ミーちゃんが、おそらく近いうちに襲撃があることをグラムさんに説明してくれたようだ。


 あのみ~の中にそれだけの意味が詰まっている。ミーちゃんのみ~は奥が深いね。



「み~?」





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