487神猫 ミーちゃん、もふもふ好きに悪い人はいないと信じてます。

 そろそろ、獣人の村への第二陣が出発の日だ。一度、迷宮の村に行って確認しに行こう。グラムさんを護衛として連れ迷宮の村に飛ぶ。



「問題ありません。予定どおり、明日出発できるように各村に通達してあります。明日の朝、神殿前に集合しますが問題ありませんか?」


「こちらも問題ありません。荷物はいくら多くても問題ないともお伝えください。ついでに見送りに来る方に大きな桶を持ってくるように言っておいてください」


「み~」


「大きな桶ですか?」


「はい」



 せっかくだから、市場で仕入れたお魚を渡そうと思う。狐獣人さんたちにはよく渡しているけど、ほかの獣人さんたちには渡してないからね。



「み~」



 そういえば、レーネ様のお誕生会が明後日に迫っている。といっても、準備は終わっている。着て行く服も馬車も問題ない。


 王様に護国の剣も献上することになっているが問題なし。


 レーネ様の誕生日プレゼントも万全。ほかの貴族では真似できないようなプレゼントを用意している。当日、参列者が驚く顔が見れるだろう。


 新興貴族舐めんなよ! って感じでいいけん制になもなる。


 まあ、護国の剣のほうがインパクトが大きいだろうけど、護国の剣の献上はレーネ様の誕生会の後に行われるからね。二度、驚く顔が見れると思う。


 包装はゼルガドさんに繊細で美しい宝石箱を作ってもらっている。それをカティアさんにラッピングしてもらった。


 ちなみに出席するのは俺とミーちゃんだけ。ペロたちは出席しない。レーネ様には出席してほしいと言われたが、出席するのは貴族だけだから式には出席しないけど、王宮にはお祝いに行くということでレーネ様になんとか納得してもらった。


 貴族としての初めての行事なので、ルーカスさんとカティアさんからみっちりと礼儀作法を指導されている。そんな俺を横目にあくびをしているミーちゃんが恨めしい。



「み~?」



 午後は烈王さんの所に修行の続きに行き、翌日の早朝に迷宮の狐獣人の村に向かった。


 荷物を荷車に載せているところだったので、ミーちゃんバッグに収納。代わりにお魚を分けてあげる。おこちゃまたちたちが集まって来るが、これから中央の神殿に行かないといけないので、お魚焼きは村の人に任せる。


 中央の神殿前に行くとハンターさんたちもちらほら歩いているのが見られる。少しずつだがこの迷宮にハンターが集まり出しているようだ。


 この階以降は中堅ハンターには厳しいけど。上級クラスのハンターには実入りのいい迷宮なので、セリオンギルド長が意図的に情報を流している。


 クイントに上級クラスのハンターが集まっていれば、白亜の迷宮でなにか非常事態が起きてもすぐに対応できるようにと考えているらしい。さすがセリオンギルド長。


 そうこうしていると、獣人さんたちも少し離れた場所に集まっている。その横には結構な量の荷物がある。生活用品に農作業用の道具に香辛料の苗などが、ところ狭しと並んでいる。


 ミーちゃんバッグに収納してから、空荷になった荷車に載った桶に新鮮なお魚を配っていく。みなさん海の魚は初めてなので興味津々。


 みなさん、よだれがダラダラと出てますよ? 



「み~」



 向こうも待っているでしょうから、名残は尽きないとは思いますが、今生の別れというわけではないので出発しますよ。これからも第三陣、第四陣と移住するわけですからね。


 転移で飛ぶと待ちかねていたようでみなさん待っていた。抱き合う人、肩を叩き合う人、家族や友人なのだろう。


 荷物をミーちゃんバッグから出してもらい、みんなで倉庫や各自の家に移動。一段落着いたといころで料理を作ってくれているおばちゃんたちにお魚を渡す。


 巨大な寸胴鍋でぶつ切りにした魚を入れて味噌で味付け。手間いらずだけど、めちゃめちゃ美味しい。



「み~!」



 ミーちゃんもその味にご満悦。これだけの量を一気に作るなんてまずない。いろいろなお魚の出汁が凝縮して出た味だろう。なかなか出せる味ではないね。


 食事の後は準備した畑に香辛料の苗を植えていく。ちゃんと根が張って丈夫に育つように、ミーちゃんのミネラルウォーターを混ぜた水を撒いていく。


 収穫できるようになるには数年かかるだろうけど、まずは第一歩を踏み出せた。無事に育ってニクセの名産品になることを願う。



「み~」



 あとはみなさんにお任せだ。たまには見に来るけどね。


 せっかくここまで来たのだから、ニクセの町に寄って行こう。合同出資の商隊の話も聞きたい。



「すべて問題なく進んでおります。フォルテから届きました資料のおかげで、商業ギルドとも速やかに話がつきました。出資しも大小の商会から来ていますので資金面も問題ありません」


「そ、そうですか……それはよかった」


「み~」



 なんなんだろね。この違いは。貴族がいない分政治の腐敗が少ないからだろうか? ルミエール王国が目指す未来はこの国のような政治体制なのかも。貴族ではなく国が選んだ役人が数年交代で各地方の行政を行う。その功績によって給料が支払われる。


 大公様がいるから民主主義ではないけれど、貴族政治とは一線を画す政治形態だね。議会があるわけでもないし、王官政中央集権政治とでもいうのかな?


 政治形態の違い以外にも街道に盗賊が少ないこともある。盗賊が少ないイコール闇ギルドの力が弱いということもあるだろう。


 特にニクセからヴィルヘルム間やヴィルヘルム周辺は、騎竜隊が常時が空の上を巡回している。それに、ブロッケン山に騎竜隊の駐屯地が出来たので、頻繁に飛竜の行き来もある。


 そんな下で盗賊稼業なんてやるのは自殺行為だと思う。まあ、それでも命知らずはいくらでもいるんだけど。悪の根は深いね。



「みぃ……」



 リンガードさんの話では、商隊はフローラ湖をニクセから南周りで村々を回り、鉱山の町ブーセ経由でフォルテに向かい、ブロッケン山の街道でニクセに戻るルートを考えているそうだ。


 なので、フォルテとニクセにブロッケン山の案内役に何頭かの白狼族か黒豹族に常駐してもらう必要があるな。



「み~」



 そのことをリンガードさんに話すと、フォルテのグレンハルトさんが白狼族を連れていると知っているらしく、羨ましく思っていたそうで逆に喜んでいる。


 リンガードさん、意外とモフモフ好きか?


 聞けば奥さんがもふもふ好きらしいね。まあ、話口調から見て、リンガードさんもかなりのモフラーだ。



「み~」



 モフラーに悪い人はいない。間違いない!



「じゃあ、あとはお任せしますね」


「はい、お任せください」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る