488神猫 ミーちゃん、レーネ様の誕生会に出席する。

 今日は朝から大忙し。俺じゃなくてルーカスさんたちね。


 レーネ様の誕生会に着て行く服の準備に俺の着せ替え。


 ゼルガドさん一家が総出で、早朝から馬車をピカピカに磨いている。


 そして、ベン爺さんとスキニーさんは馬車を引く馬たちを最高の状態に仕上げをしている


 俺はただ黙って立ってるだけ。カティアさんとララさんにお任せだ。


 ミーちゃんはヤナさんに可愛らしくおめかしされている。黒真珠のネックレスにシルクのピンクのスカーフで出席するようだ。黒真珠のネックレスはレーネ様とのお揃いだからね。着けないわけにはいかない。



「み~」



 準備が整いみんなのお見送りの中馬車に乗り込む。



にも衣裳って、こういうことを言うんだな」


「ネロはルー兄ぃのじゃにゃいにゃよ?」


「……」


「ネロさんが貴族に見える!?」


「姉さん……ネロさん、貴族だからね」



 緊張感のない奴らめ……。



「じゃあ、行ってきます」


「み~」


「おみやげ期待してるにゃ!」


「にゃ!」


「がう!」


「きゅ~!」



 おみやげってねぇ……逆にこちらがおみやげを持って行く側なんだよ? ペロたちもこの後でレーネ様のお祝いに行くんだからプレゼントを用意しておくんだよ。



「にゃ、にゃんですとー!?」


「にゃ!?」


「がう?」


「きゅ~?」



 ベン爺さんとスキニーさんが御者。ルーカスさんはもちろん執事。グラムさんは俺の護衛として王宮に向かう。


 うちの馬車が王宮の門をくぐると、注目を集める。新しい黒塗りの馬車にうちの紋章。目の効く人ならほかの馬車より揺れが少ないことに気づくはず。


 俺とミーちゃん、ルーカスさんとグラムさんは玄関前で降りる。馬車は練兵場に移動だ。


 今日は表から堂々と王宮内に入る。会場にはまだ入れないようで別の部屋で待機。


 部屋はいくつか用意されているようで、俺が案内された部屋はランク的にいえば下から二番目。この国の男爵クラスがいる部屋だ。多くの紳士淑女がいる。


 ほかにも準男爵、子爵、伯爵、侯爵、各国の招待客に分かれているとルーカスさんが教えてくれた。


 それにしても、なんか俺たち奇異の目で見られてない?



「み~?」


「ブロッケン男爵家は新興の貴族ですから、ネロ様のお顔を知る者は少なく、何者かと様子を窺っているかと思われます」



 確かに、いまだに俺はほかの貴族と付き合いがない。。シュバルツさんが今日のレーネ様の誕生会で、知り合いの貴族と話ができるように段取りをしてくれたようだけど、まだ接触はない。


 向こうも俺の顔を知らなければ、こっちも知らないからどうしようもない。どこで話しかけてきてくれるのだろうか?


 ルーカスさんは執事として仕事をするために俺から離れていった。横には無言で立つグラムさんがいる。俺はただ椅子に座って待っている。ミーちゃんをモフリたいけど、せっかくおめかししたのでモフれない。暇だ。


 そうこうしていると会場に入る時間が来た。爵位の低い順に会場に入るようだね。案内状に書かれた番号の場所に行く。子爵までは立ち見のようだ。


 後から入って来た伯爵以降は用意された席に着く。


 全員が会場に入ったのだろう。音楽隊が演奏が始まった。


 少し経つと勇ましい音楽に変わり、



「国王陛下のおな~り~」



 と声がかかり、全員が臣下の礼を執る。要するに、片膝をついて頭を下げている。


 厳かな雰囲気の中、王様の声が響く。



「皆のもの面を上げよ」



 まだ、立っちゃだ駄目。顔を上げるだけね。


 遠くのひな壇に王様と王妃様、レーネ様が座っている。一段低い場所には王様の第二夫人と第三夫人が座っている。初めて見た。



「今日は我が娘の四歳の誕生祝に集まり大儀である。楽しんでいくがよい」



 レーネ様が立ち上がってぺこりとお辞儀をする。微笑ましい姿に会場が少し和んだ雰囲気になった。


 ここでやっとみんなが立ち上がる。そうすると、給仕の人がお酒やジュースの入ったグラスを渡し始める。


 俺はジュースをもらった。残念ながらミーちゃんの分はない。もう少し我慢ね。



「み~」



 宰相様が集まった祝い客の前に立ち、



「レーネ様の上に幸多からんことを。乾杯」



 宰相様の音頭でみんなが乾杯する。あとは食事や歓談なんて思ったら甘い。


 ここから、祝い客がレーネ様に誕生祝に贈られたプレゼントの目録が読み上げられる。まあ、この間は給仕の人が歩き回っていて、ドリンクのおかわりができる。


 それにしても、長い……。


 どこそこの名品、芸術品、武器や防具から特産品。しまいには現金まで贈られている。だけど、たいした目を引くものがないね。


 そして俺の番が来るまですでに一時間近く経っている。レーネ様も飽きてきて椅子に座ったまま、足をブランブランさせているね。



「ブロッケン男爵様より贈られし品は……スキルオーブ?」



 読み上げていた人が素っ頓狂な声を上げたので会場がざわつく。



「ブロッケン男爵。前にでよ」



 あぁ、王様からお呼びがかかちゃったよ……。


 行かないと駄目だよねぇ?



「み~」


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