485神猫 ミーちゃん、将来に不安を覚える。
「まあまあ、落ち着いて。まずは中に入ってゆっくり話しませんか?」
「み~」
「邪魔すんな!」
「なんだよ。おめぇは!」
興奮してるのはわかるけど、その態度はいただけないね。
「君たちの雇い主だよ。君たちの借金の肩代わりもしている」
「み~」
「「うっ……」」
顔色が悪くなっている。真っ直ぐで、勢いがあるのは若者の特権だけど礼儀は大事だ。
「「いでっ!?」」
ゼルガドさんの奥さんの拳骨が二人の頭に落ちた。い、痛そう……。
「お初にお目にかかります。ブロッケン男爵様。ゼルガドの妻でフーリアと申します。この馬鹿二人は息子のドラムとジルオです。あとでしっかりと絞めておきますので、何卒、ご無礼のほどお許しください。
「す、すまねぇ……ネロ」
奥さんのフーリアさんはまともそうだ。でも、息子を絞めるのね……。
「どうぞ、お入りください」
「み~」
ルーカスさんがゼルガドさん一家を居間に案内する。ゼルガドさん一家が乗って来たバムが引く荷馬車二台はベン爺さんとスキニーさんに任せた。
俺が先にソファーに座ると、
「どうぞ、お座りください」
とルーカスさんがゼルガドさん一家を促す。まあ、ゼルガドさんはルーカスさんが言う前に座っていたけどね。親しき中にも礼儀ありじゃないの?
いつもこたつの中にいるレティさんがこたつごと消えている。ルーくんたちもいないから、みんなで自分の部屋に退避したみたいだ。
お茶を用意してくれたララさんとヤナさんに、眠そうなムニュムニュ姉妹を渡すと嬉しそう抱っこして陽当りのいい場所に移動する。
「息子さんはてっきり成人してるのかと思ってました」
「おいおい、俺をいくつだと思ってるんだよ」
「み~?」
正直不明。ドワーフ族の男性はみんな髭を生やしているので実年齢がわかりにくいんだよね。
「息子さんに店を持たせたいって言っていたので、てっきり成人しているのかと」
「将来の話だ。将来の。こんなケツの青いひよっこ共に店なんて任せるわけがねぇだろ」
「うるせい! オヤジなんかより、俺たちのほうが腕がいいに決まってんだろう!」
「そうだ! イカレ頭!」
「みぃ……」
うーん。なんかこの子たちはなっていないな。この子たちにはまず教育が必要のようだ。ミーちゃんもこの子たちの将来に不安を覚えてるみたい。
「息子さんたちは読み書き計算は?」
「一通りは私が教えています」
一般の子どもが通う学校なんてないから、親が教えるのが普通。お金のある家庭なら私塾に通わせたり、家庭教師を雇ったりするみたいだけどね。
「基礎はできていると考えていいのかな? 五十レトのリンゴを二十二個買ったらいくらになる?」
「馬鹿にするなよ!」
と言いつつこの兄弟は両手の指を使って考えている。どういう計算の仕方なんだろう? 足の指を使っても足りないと思うけど……。
「千五十レトだ!」
「だぁっ!」
フーリアさんの拳骨が落ちる。
「「いでぇっ!?」」
「みぃ……」
これは再教育が必要かな。
「読み書き計算、それに礼儀作法は商人の基本です。職人でもそう変わりはないでしょう。月に六回、晴れている日限定ですが、うちの敷地内にある孤児院で青空教室を開いているので参加させましょう」
「しょ、職人に勉強なんて必要ねぇ! 腕が命だ!」
「そうだ! そうだ!」
「「がぁっ……」」
今までの中で一番痛そうな拳骨が落ちた。
「よろしくお願いします」
「「ふんっ」」
この子たち本当にゼルガドさんの子どもか? 口の悪さだけ遺伝ってわけじゃないよね?
「み~?」
「す、すまねぇな……ネロ」
まあ、息子さんのことはいい。成人するまでまだ十分に時間がある。しっかりと教育しよう。ヤンくんやカヤちゃんが如何に優秀かわかったよ。
「フーリアさんはどうしますか?」
「借金を早くお返ししたいので働かせていただければと思います」
「なんかうちのにでもできる仕事はねぇか? ネロ」
「そうですねぇ。豆腐作りなんてどうでしょう。ちょうど豆腐作りをしてくれる人を探そうと思っていたところです」
「豆腐って、大豆で作るあの白いのか?」
「神猫屋で売ろうと思っています」
豆腐は主力商品になるポテンシャルを持っている。最初は神猫屋で田楽やおからを使った卯の花を売り出して知名度を上げていけば必ず庶民の味として浸透していくはずだ。
なんと言っても原価率が低い! 材料費なんてただ同然でいくらでも手に入る。大袈裟に言えば、作り手の技術料だけと言っても過言ではない。
「まあ、少しゆっくりしてください」
「悪りぃな。ネロ」
「よろしくお願いします。ほら、お前たちもだよ!」
「よろしく……」
「よろ~」
「み~」
住む場所はヤンくん親子の横の部屋でいいだろう。四人だとちょと狭いかな? ゼルガドさんの部屋はそのまま使ってもらってもいいか。
「み~」
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