482神猫 ミーちゃん、ジュゴンのオカマ~。

 浮いてる腕をよく見れば、烈王さんの腕だ。



「これは転移の応用だな。空間と空間を繋げた状態で維持させている。但し、一歩間違えて空間が閉じれば腕が切断だけどな。まあ、これができるようになれば、よほどのことがない限り負けはないな」



 そりゃそうだ。死角から好きなだけ攻撃できるんだ。認識できる所に繋げられるんだから、望遠鏡で遠くから見て相手が気づかないうちにることも可能になる。


 恐ろしい技だけど、覚えたい。



「まあ、頑張れや」



 訓練あるのみってことだね。まずは転移からだな。



「そういえば、ミーちゃんはどこに行ったんですか?」


「眷属殿には地獄の釜に入ってもらった」


「地獄の釜?」


「俺がここにいる理由は話したよな」



 大怪獣戦争で出来た空間を塞いでいるってやつだな。



「まさか!?」


「そこに落とした。眷属殿は不老不死。神とて不老ではあっても不死ではない。その稀有な力を持っているからな。神気渦巻く中に落とせば神気を使えるようになるだろう?」



 そこなんで疑問形? それに不死でも痛みは感じるんですよ? 苦痛軽減スキルは持ってるけど。



「まあ、大丈夫じゃね?」



 だから、なんでそこ疑問形!?


 ミーちゃん、烈王さんに騙されて送り込まれたんだろうな……。地獄の釜では珍しいものが見れるぞなんて言われて、み~?(ジュゴンのオカマ~?)なんて感じだろうな。


 そういえば、その場所にある太古の神々の力の一端を手に入れると、なんちゃらかんちゃらって言ってませんでしたか?



「まあ、それは大丈夫だ。眷属殿のキャパシティは不老不死でほぼ満タンだ。余計な力を吸収する余地はない」



 そうなんだ。でもそれだけミーちゃんの不老不死スキルって凄いことなんだろうね。


 で、俺の修行の続きは?



「まずは……冷えたエールだ!」



 烈王さんだからな……。高級肉オーク肉に塩を振ったものと、味噌を塗ったものを焼く。



「おっ、オーク肉か!」


「赤い霧で倒した奴です」


「お。おう……」



 嘘です。でも烈王さんの反応、なんか怪しい。



 高級肉オーク肉はミディアムウェルダンの焼き加減がちょうどいい。脂が滴り、脂の焼ける匂いと味噌の焼ける匂いがマリアージュして、なんとも食欲をそそる。


 焼けたものを烈王さんに渡す。じーっと焼けた高級肉オーク肉を見てから口に運んだ。



「問題なく美味いな」



 そのホッとした表情はなんだ? やっぱり実は確証がなかったんじゃないのか?



「正直に答えてください。赤い霧で倒したオークは問題なく食べれるんですよね?」


「お、おう。今、こうして食べてるじゃないか」


「それ、普通に倒したオークです」


「……」



 怪しい。



「すまん……実は知らん」



 一体、赤い霧で倒したオークを出して見せる。



「普通のオークだな。鑑定でも何も出ていないな」



 上を見上げピッーっと指笛を鳴らすと、上空からドラゴンが降りて来た。



「食ってみろ」



 ドラコンさん、一瞬、えっ、食べていいの? みたいな表情を浮かべたがぺろりと食べた。もちろん、お食事中はグロイので見ていない。



「問題ないようだな。行っていいぞ」



 ぎょっとした表情を見せるドラゴンさん。逝っていいぞと勘違いしたのかも。俺も一瞬、頭に浮かんだ。なにせ毒見だから。



「問題ないな」


「烈王さんはドラゴンなし人でなしですね。毒見をさせるなんて」


「ひどい言い草だな。王の食事を毒見するのは配下の仕事だぞ。それにドラゴンは毒や呪いで死んだりしない。ちょっと苦しむくらいだ」


「まあ、そういうことにしておきましょう。冗談なく食べて大丈夫なんですよね?」


「食べてる間ずっと鑑定していたが、なにも変わらなかった。問題ない。あいつもオークが食えて幸せだろう」



 そこまで言うのなら問題ないかな。商業ギルドに卸してもいいだろう。



「それで、俺の修行の続きは?」


「時間を操るのはまだ熟練度が足りないから無理だな。神気を使うのは眷属殿が覚えてからだ。ネロをあの場所に送ったら、肉体どころか魂も消え去るからな」



 そんな場所にミーちゃんはいるんだ……。



「そこでだ。修行の効率化を行うために、あるスキルを覚えてもらう」


「修行の効率化、ですか?」


「修行の効率化だけじゃないぞ。覚えられればネロの戦力アップにもなる」


「強くなれると?」


「あ、間違いなくな」



 烈王さん、凄い自信だ。これは覚えなくてならないな。



「そのスキルとは?」


「並列思考と高速思考だ。レアスキルの類になるが、レアスキルの中でも比較的覚えやすい。持ってる者も多いな」



 僕が考えた最強スキル構成に、必ずといっていいほど挙げられるスキルだな。これは、期待できる予感。



「とは言ってもそこまで使い勝手のいいスキルじゃないからな」



 どういうこと? 簡単に言うと人の脳では多くは処理できないそうだ。人の脳では精々、二つの思考を二倍の速さで処理できるくらいらしい。


 それ以上やりすぎると、脳にダメージを与えて記憶障害を引き起こす。それは怖い。


 ミーちゃんとの記憶がなくなるのは嫌だなぁ。


 気をつけよう。


 まだ、覚えてないけどね。




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