480神猫 ミーちゃん、神気使えません……。

 今日は早朝からヴィルヘルムの港に来ている。もちろん目当ては市場のお魚。


 特に今日は白身の魚を狙って買う。かまぼこを作ろうと思う。


 市場の中を歩けば、いつもどおりミーちゃんに声が掛かる。



「み~」



 ミーちゃん、みんなにご挨拶。たまにお呼ばれして、焼き魚や珍味をご馳走になる。今日はグラムさんしか護衛に連れてきていないから、すぐにお腹いっぱいになってしまう。


 そして、烈王さんへのお土産に珍味を購入。


 かまぼこ用に市場の人と話をして、タラのような魚や白身魚を手に入れる。ついでに王都の契約しているお店に卸す魚も買ってしまおうということで、結局爆買いになってしまった……。



「眷属殿とネロならいつでも歓迎だが、今日はどうした?」


「重力スキルを覚えたので、次の修行にと」


「そうか。じゃあ、まず酒だな!」


「み~」



 まず、酒だね……。枯れ木を集め火を点け、魚を焼き始める。烈王さんは冷えたエールだ。



「グラムは一皮剥けたか?」


「み~?」



 いつもなら、お姉さんの所に特攻をかけるところだが、今日はおとなしく重力スキルを使って負荷をかけ瞑想している。



「グラムさんも重力スキルを覚えたので、訓練に応用してるんです」


「み~」


「ほう。いい使い方だな。地力が上がるな」



 烈王さんにアレックスさんにもらったドラグラブラッドを見せ聞いてみる。



「これをアレックスさんにもらったのですが」


「あぁん? そいつは俺が作ったやつだな。それがどうした?」



 やはり、烈王さんが作ったのか。なので赤い霧について聞いてみる。



「あれは毒じゃないぞ。呪いでもない。なんて言ったらいいんだろな……言うなれば、触媒か?」


「触媒?」


「み~?」


「あの霧に包まれると指輪の持つ力が広範囲に及ぶようになり、血が霧に引っ張られるんだ。植物には効かないがたいていの生物には効果がある。まあ、範囲を拡げるとレジストされる場合もあるがな」



 血だけを引っ張り出すのか、恐ろしいAFだ。でも、これで気兼ねなくオークのお肉が食べられる。


 それにしても、なんでこんなものを烈王さんは作ったんだろう?



「昔な、レンのやつがどこからかAFを見つけてきてな俺に自慢しやがったんだ」


「レン?」


「み~?」


「知らないのか? この国を建国した俺の友だった奴だ」



 ルミエール王国の何代か前の王様の弟だっけ? 烈王さんの初代同盟者だね。



「そいつが見せびらかすからな、そんなもの俺だって作れるって言ってやったら、じゃあ作ってみろなんていうからいろいろ作った」


 その一つなんだね……。転移装置も烈王さんが作ったものだと言っていたね。



「前にもらったAFも烈王さんが作ったんですか?」


「み~?」


「前にも言ったが転移装置はそうだな。ほかのはレンが拾ってきた物だ。みんな神気が抜けて劣化した物だ」



 うなんだ。でも、どうしてだ?



「作れるのであれば、直せるのでは?」


「無理だな。本来のAFは神人が作ったものだから神気で動く。俺は神じゃないからな、俺の作るAFは俺の力を込めて動くようになっている」



 なるほど、そういうことならやはり俺の仮説は正しいのかも。


「以前もらったAFがいつの間にか性能が変わっていたことがあるんです。あれはミーちゃんの神気が補充されたと考えていいのでしょうか?」


「そうなんじゃね? ここで、やってみればいいんじゃね?」


 ミーちゃんバッグから身代わりのネックレスを出してもらう。


 これは最初は一度だけ一万分の一の確率で即死ダメージの身代わりになるものだったが、最近確認したら五千分の一の確率で防ぐに変わったものだ。だけど、使えねぇ……。ど


 こまで確率が上がるかはわからないけど、今以上には上がるだろうと思う。じゃないと、やっぱり使い道のないゴミだから……。




「よし、眷属殿。そのネックレスに神気を込めるんだ」


「み~?」


「いやだから、その身に宿す膨大な神気を、チョロっとネックレスに入れるんだよ」


「み、み~?」



 ミーちゃん、困惑。


 そりゃそうだ。ミーちゃんは神界で修業をしたことがない。そう、神様が書いていた。


 ミーちゃん、ネックレスを睨んで唸ったり、テシテシ叩いたり、胸に抱いてコロコロ転がったりしている。



「眷属殿はなにやってんだ? なあ、ネロ?」


「ミーちゃんなりに神気を込めようとしているんじゃないですか?」


「そ、そうなのか? た、大変そうだな……」



 いや、違うんです。やり方を知らないんです! と烈王さんに説明。



「マジで!? 前にできるとか言ってなかったか?」


「まじです。ミーちゃんは神界で修行をしたことがありません。それと使えると言ったのは神気を乗せた攻撃ができるという意味で、神気自体をどうこうできるわけではありません。神猫だけど」


「みぃ……」



 ミーちゃん、悲しそうにネックレスを前脚で前に押し出す。



「次の修行は決まりだな」


「みぃ……」



 よろしくお願いしますぅ……とウルウルした目で烈王さんを見上げるミーちゃん。



「ついでに、ネロもな」


「はぁ? 俺に神気なんてないですよ?」


「ないわけないだろう! 偽勇者なんかより濃密な神気を宿してるわ!」


「み~?」



 そうなの? 神様はそんな力は与えないって言ってたけど? ポンコツ神様だからなぁ……。



「みぃ……」





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