478神猫 ミーちゃん、ほっとけーき?

 振り下ろすと同時に土スキルも発動。それは一瞬の出来事。雷スキルで素早さが強化され、土スキルで強防御に強化された凶悪な鈍器と化した俺の右拳が、グラムさんの鳩尾みぞおちに突き刺さる!



「ぐへぇ……」



 ドンッ! と音と共に、グラムさんの体がくの字に曲がり、地面が陥没。蜘蛛の巣状の亀裂がはしる。


 そこには。白目を剥いて、口から泡を吐いたグラムさんの姿が……。



「逝ったか……」


「はい、間違いなく逝きました」


「み、み~」



 拳の上から肩まで激痛がはしっている。やっぱり、この攻撃方法には無理がある。回復スキルを使うが、痛みが少し和らいだくらい。


 そんな時に俺とグラムさんに光の雨が降り注ぐ。ミーちゃんの仁慈スキルだ。ありがとね。その後何度か回復スキルを使いなんとか痛みが消えた。後は自然回復に任せる。



「おい、お前ら何やってんだ?」


「ちょっとした実験だ」


「お客さんたちが驚くからやめれ!」


「すまん……」


「すみません……」


「みぃ……」



 店から出てきたコンラートさんに怒られた……。



「生ごみは指定の場所に指定の時間に出すんだからな! 忘れんな!」



 コンラートさん倒れているグラムさんを一瞥して言い放つ。グラムさん……憐れ。



「お、俺は……気絶していたのか?」


「ああ、見事なネロの一撃でな」


「み、み~」



 この土スキルの使い方はどうなんだろう? 炎スキルで力を上げるほうが正当なような気がする。だけど、この方法で土と炎の組み合わせると更に凶悪な攻撃になるな。土と炎の組合せは溶岩だけじゃないんだね。これに雷も組合わせると最強じゃないのか?


 それを踏まえると、烈王さんを除けばアレックスさんが最強になるのではないだろうか?



「そんなに甘くないぞ。雷スキルを完全にものにすればいいところまではいけるかもしれん。だが、長老たちにもましてシュヴェルトライテ様にもまだまだおよばん」



 あらやだ、これだけの強さを手に入れたアレックスさんで勝てないなんて、グラムさんの越える壁は遥か頭上にあるようだ。



「み~」



 それにしても、こんなに簡単にスキルを覚えるのに、どうして少ないスキルしか持っていないのかな?



「どうしてドラゴンは少ないスキルしか持っていないのですかね?」


「我々は、神によって造られた命ではないからではないか?」


「だから、神の恩恵を受けないと?」


「違う。神の恩恵を受けなくとも生きていけるからだ」



 なるほど、絶対強者だからな。元から備わった能力だけでも十分なんだろう。ただ、この世界に住んでいるから元からの能力がスキルとして現れているのかもしれない。


 魂の器なんて人族となんて比べものにならないくらい大きいだろう。長く生きているからいろいろな経験もしている。スキルを覚える下地はあるけど、神の恩恵を受けなくとも生きていけると考えているからスキルが発現しないのかも。


 でも、アレックスさんはスキルを覚えたいと思った。それすなわち、神の恩恵を受けたということになる。どの神様に?


 グラムさんはミーちゃんの下僕だから、間違いなくミーちゃんだろう。アレックスさんはフローラ様になるのだろうか?


「今回、その神様の恩恵を受けたわけですがいいんですか?」


「別にいいんじゃないか? 恩恵を受けたからといって従わなければならないわけじゃない。使わせてもらう感謝の念で十分だろう」



 そんなもんか。まあ、俺たちも同じようなものだね。それよりグラムさん、またいじけているんですけど……。



「ネロにも負けた……俺は弱い……」


「どうします。これ?」


「ほっとけ」


「み~?」



 自業自得といえばそれまでか……。


 そしてアレックスさんからのご褒美のAFは銀色の指輪。


 ドラグラブラッド 対象の血を吸い、守りか攻撃の力に変える。


 なんか物騒な指輪だ。アレックスさんの説明によると、射程は四メルほどで対象を選択すると指輪から管がの伸び対象の血を吸い取り命を奪う指輪なんだそうだ。



「ネロは接近戦が苦手そうだからな。こいつを使えば相手はイチコロだ。そして血が溜まれば溜まるほど、シールドや攻撃が強力になる優れものだ」


「み~」



 確かに俺は接近戦が苦手だ。だけど、これって悪役の技っぽくねぇ? 暗黒卿の雷攻撃といい、俺って悪役一直線じゃないだろうか?


 なんかこうヒーローっぽい技を考えないと駄目だ。このままでは、二つ名が魔王ネロになってしまう。神猫の相棒が魔王……駄目でしょう!。


 でも、面白そうなAFだ。血が溜まれば必殺技も使えるなんて、アレックスさん男心をくすぐる場所を心得てますなぁ。グッドです!



「ありがとうございます! さっそく使ってみます。グラムさん、行くよ!」


「み~」



 まだ地面にのの字を書いているグラムさんを引っ張って迷宮の村に飛び、オーク狩りをしよう。


 オークリーダーが部屋の真ん中に立っている。いつ見ても惣重な佇まい。しかし、所詮はオーク肉高級肉、美味しく頂くだけだ。


「そろそろ、ピシッとしてください。グラムさん! ミーちゃんの下僕にあるまじき姿。情けない」


「み~!」


「お、おぅ……」



 駄目だこりゃ……。



「みぃ……」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る