477神猫 ミーちゃん、逝ってください!

「それで、属性スキルを自分に使う検証はどうでした?」


「み~?」


「ネロの言うとおり炎スキルは力が上がった。正直、驚きだ。土スキルは最初はわからなかったが、どうやら防御が上がったようだ」



 アレックスさんも熟練度が高かったようで、負の効果は出なかったと言っている。俺の検証結果も伝えたところでアレックスさんがとんでもない情報を出してきた。



「スキルの力を全体ではなく、一部だけに集めると、そこだけ大幅に効果が上がるぞ」


「み~?」



 ほうほう、そなことができるのか。だけど、大気スキルと雷スキルには使えないな。この二つは体全体に使うことで効果を発揮する。一部だけでは効果が出ないと思う。


 水スキルは回復力が上がるのか? でも、回復スキルを覚えた今、回復スキルの熟練度を上げるほうが効果的だと思うな。まあ、保険と思っておこう。


 となると、土スキルか。防御力が上がるということなので、一点集中の強防御ができるとなるのだろう。


 そういえば、まだ土スキルは試していなかったな。


 土スキルを全体に行き渡らせる? 硬いといえばダイアモンド? でも、ダイアモンドって衝撃に弱いんだよね。硬いといって思いつくのはやはりクロムモリブデン鋼。通称クロモリ鋼だな。


 では、やってみますか。



「……」


「み~?」


「なにをやって……ん? 硬い?」



 フリーズしている俺の肩をアレックスさんが触れた。



「だっー! だ、駄目だ動かない……」


「土スキルか?」


「硬い金属をイメージしてやったら動けなくなりました……」


「みぃ……」


「動けないのか? だが、相当に硬くなっていたぞ。おそらくだが、ナイフや矢の攻撃くらいなら十分に防げるくらいにな」



 えっ!? そこまでなの? さすが、クロモリ鋼だけのことはあるのか? 動けなくなるけど……。


 それに、今もの凄く体が重く感じる。これが負の効果なのかも。俺の土スキル熟練度がまだまだのせいだな。


 体が重いが検証の続き。今度は右腕だけに集中して力を集めてみる。


 腕が抜けた!? いや、抜けてないけど地面に落ちた……。落ちた場所の地面に腕が刺さっでいるんですけど。



「みっ!?」



 片腕が地面にめり込んだ状態の俺に、アレックスさんが寄ってきて地面に刺さった腕を触り考え込んでいる。


 アレックスさんが離れたので、土スキルを解除する。なんとか地面に刺さった腕を抜く。硬くなるだけでなく、重さも変わるのはちょっとねぇ。



「恐ろしく硬くなっていた。あれなら剣の攻撃を受けたところで傷一つつかないだろう。おそらくだが、あれで殴られたら、俺でもダメージを負うかもな」



 おぉー、それは凄い。腕が持ち上がればね。たとえ、腕が持ち上がってドラゴンを殴れたとしても、強防御されていない場所の骨が砕けると思うよ……。



「み~!」



 やらないよ。やりませんからね! それに誰を殴るのさ!



「み~」



 やめなよ……。もし本当にダメージが入ったら、しょぼい人族の俺にまでダメージを受けたって立ち直れなくなるよ?



「み~?」


「呼んだか?」



 呼んでません。



「ネロがドラゴンに拳でダメージを与える技を編み出した」


「いやいや、アレックス。お前、耄碌でもしたのか? スキルでならわかるが、ネロが拳で俺たちドラゴンにダメージを与えられるわけがないだろう」


「ほう。なら、それができたらどうする?」


「みんなの前で、三毛猫回ってにゃんをしてやるよ! だが、できなかった場合はどうするんだ!」


「言ったな、グラム。お前がそういう浅はかな考え方だから強くなれんのだよ。そうだな、万が一できなかった場合は、俺がお前とクラウディアの仲を責任をもって取りなしてやる。まあ、ありえんがな。ネロ、れ」



 いやいや、今の普通にやるのではなく、明らかに殺気のこもったれだったよね?



「み~」



 えぇー、本当にやるの? やるんですね……。でも、失敗したほうがグラムさんのためになるかも。



「ネロ、変な気はおこすなよ。全力でれ。成功したら俺の持っているAFをやろう」


ります!」


「みぃ……」



 ミーちゃん、AFのためなんだよ。AFが欲しいんだよ!



「仕方ないですね。これもAFのためです。グラムさん、それではここに横になってもらえます? まだ、自分で自由に動かせないので」


「お、おう。なんか凄いやる気が満ちてないか……まあ、いいだろう」



 グラムさんが地面に横になり、グラムさんのお腹の横に俺が立つ。空手の瓦割の要領だな。


 ミーちゃんはアレックスさんの横でプカプカ浮いて観戦。


 よし、やったるでぇー! 全身を雷スキルで強化。やる気に満ちているからか、紫電の時のようにパチパチと紫の火花が飛び交う。



「お、おい、殴るだけじゃなかったのか?」


「勢いをつけるためですよ。それに俺如きの拳でダメージなんて受けないんでしょう?」


「あ、当たり前だ! ドラゴン、舐めるなよ!」



 ふぅー。時は満ちた。



「それではグラムさん、逝ってください!」


「み~!」


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